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「伝統工芸」の定義が変わる!? 購入したい伝統工芸品や地場産業品ランキング。1位は今治タオル、2位は鯖江メガネ

「伝統工芸」の定義が変わる!? 購入したい伝統工芸品や地場産業品ランキング。1位は今治タオル、2位は鯖江メガネ

日本各地には、その地域特有の産品がある。そこで認知度の高い産品のランキングを作成した。出典は「都道府県魅力度ランキング」で知られる「地域ブランド調査2022」の1000市区町村版から、各地の伝統工芸品や地場産業品の購入意欲度の順とした。その結果1位は今治タオルとなったが、そのランキングには大きな課題が浮かび上がってくる。

日本の各地には、その地の歴史や文化を受け継ぐ伝統工芸品がある。そこで、「地域ブランド調査2022」の結果から、市町村名から連想した、購入したい伝統工芸品や地場産業品があるか否か、すなわち「伝統工芸品や地場産業品の購入意欲度ランキング」を作成した。

日本の人口に比例するように抽出・回収した回答者に対し、20の市区町村を提示し、「それぞれの市区町村について、購入(食品以外の産品)」したいものをお書きください。」という設問に対して回答した中から、伝統工芸品や地場産業品にかかわるものを抽出して再集計した。


日本の人口に比例するように抽出・回収した回答者に対し、1人あたり20の市区町村を提示し、「それぞれの市区町村について、購入(食品以外の産品)」したいものをお書きください。」という設問に対して回答した中から、伝統工芸品や地場産業品にかかわるものを抽出して再集計した(1つの市町村あたり3つまで記入可能)。

なお、「めがね」、「眼鏡」、「メガネフレーム」、「鯖江メガネ」など、表記方法が異なっているが同一の工芸品を表していると判断できるものは合計し、その件数が多い順でランキングを作成した。

その結果、最も多く産品が想起されたのは「今治タオル」が人気の今治市。次いで2位は「メガネ」の鯖江市、3位は「輪島塗」の輪島市となった。
以下では、上位の伝統工芸品や地場産業品について、調査結果と具体的な特性などについて紹介する。

5年連続!!今治タオルが1位。

「購入したい工芸品・地場産業品」の1位は愛媛県の今治市で5年連続となった。同市の産品として想起された産品名のうち9割以上が「タオル」、「今治タオル」で占めている(残りはご当地キャラクターの「バリーさん」など。ただしこの数は集計の対象街となっている)。

同市は「それぞれの市区町村について、以下(地名の付いた伝統工芸品・日用品など食品以外の商品)をご存じですか。」という設問のランキングでも1位である。これは集計が始まった2015年から常にトップ4以内に位置するほどであり、2015年の22.7%から右肩上がりに認知度を高め、11ポイント上昇した33.7%で今年1位となっている。
つまり、「今治タオル」は今治市の代表的なものとして周知されている。

「今治タオル」は四国愛媛県北部の地でおよそ120年の歴史がある。明治時代から製造され、今では日本最大のタオル産地となり、国内に流通する国産タオルのシェアの5割以上を占めている。

そんな「今治タオル」の特徴は、ふわふわな柔らかさと肌触りの良さ、そして最大の特徴は優れた吸水性にあり、使い始めた日からよく水を吸うことで、これが魅力の源だ。

「今治タオル」の認知度は地元である「中部・四国」の地域が一番高いが、全国的にも認知度が高いことがわかった。また、専業主婦や30代以上の認知度や購入意欲度が高く、主婦層の女性に人気の産品となっていることがうかがえる。

一時、安価な海外製のタオルの流通で危機を迎えたがブランディング化に力を入れたことにより、今では贈り物としても人気があり、国内のみならず海外にも認知を広げ、世界的に有名なタオルとして名を広めている。

2位は鯖江のメガネ。世界3大産地のひとつ

2位は福井県鯖江市の「メガネ」で、2020年に初のトップ10に入り、順位が継続的に上がっている。

こちらも9割以上が「眼鏡」または「メガネフレーム」を挙げている。鯖江市は国指定の伝統的工芸品である「越前漆器」の産地でもあるが、多くの人がメガネを挙げている。ちなみに、鯖江で製造しているのはメガネフレームで、レンズは大阪など他産地が多い。

鯖江市の地場産業である眼鏡フレームは、日本製品の95%以上のシェアがあり、鯖江市はイタリア、中国とならぶ世界三大眼鏡産地である。

それは昭和56年(1981年)に他国では成し得なかった「チタン」素材を世界で初めて加工に成功し、世界最高水準の技術を有したことがきっかけになっている。今でこそ一般的な「チタン」のメタルフレームの特徴は軽くて丈夫であること。これにより、鯖江のメガネフレームは世界的に評価されることになった。

鯖江の眼鏡製造では分業制であり、パーツ1つごとに日本の職人技が注がれており、専門の職人たちによって細部にまで妥協のない、こだわりから生まれている。そのため、チタン以外の製品でも高い評価を得ている。

なお、上記のランキングとは異なるが、「地名の付いた伝統工芸品の認知度」では、2015年は13.2%だったが、2022年には25.7%とほぼ倍増しているように、近年ますます人気が高まってきている。

3位 継続して認知され続ける「輪島塗」。若い世代への認知が課題か

石川県輪島市の「輪島塗」は前年に引き続き3位。輪島市も同様に9割以上が「輪島塗/漆器」で占めている。また、「地名の付いた伝統工芸品の認知度」でも2015年から常に3位以内に位置しており、継続して認知され続けている。

「輪島塗」とは経済産業省の「伝統的工芸品」に指定されている伝統的な日本の漆器である。縄文時代前期(約5000年前)の頃から、漆器の伝統を脈々と受け継いできた場所、それが能登半島であり、輪島塗だといわれている。

様々な漆器産地がある中で輪島漆器は他とどう違うのか。輪島漆器の最大特長は堅牢な塗りであり、木の素地に輪島特産の地の粉(珪藻土の一種)を用い、完成までの多くの製造工程を丁寧に手作業で行う。つまり丈夫な堅地漆器として知られ、人気を博している。

ところが、輪島塗については、特に60代、70代からの購入意欲度が高く、全体の回答数の半分以上を占めている。しかし、20代では全体の回答数の1割にも満たない。

若い世代へ輪島塗の魅力を伝え、認知度や購入意欲度を高めていくことが輪島塗の課題となっていると言えるだろう。

「伝統工芸」の定義が変わりつつある?

この表は市区町村の魅力として「優れた伝統的技術がある」と回答した集計結果である。ここでは「地場産業」という言葉は含まずに、「伝統的技術」を評価してもらったものだ。

その結果、1位は西陣織や京焼・清水焼、人形など国指定の伝統的工芸品が17品目もある京都市。2位は輪島市、3位は伊万里焼の伊万里市。伊万里焼は世界的に知名度の高い国指定の伝統的工芸品である。

そして4位に今治市、5位が鯖江市となっている。

ところが「今治タオル」と「鯖江のめがね」は伝統的工芸品ではない。鯖江のメガネづくりは1905年。今治タオルは1894年。いずれも100年以上続いている歴史がある。いずれも海外から製造方法などが伝わり、国内で独自の製法などが開発され、地場産業として定着したものだ。

日本における「伝統工芸」としては、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品」がある。また、それ以外にも各地には陶磁器や織物など、長い年月にわたり継承している技術が用いられた「伝統工芸」が数多くある。

その中で「今治タオル」や「鯖江のめがね」が上位にランクされる理由は、織物や陶磁器などが年代の高い世代から指示を集める一方で、若い世代からの評価はあまり高くはない。ところが、今治タオルや鯖江のめがねは、若い世代からの評価も高い。

その背景には、今治タオルや鯖江の眼鏡は世の中に即した形でブランディングを行ったり、新たな素材や技術を用いたりしたことで、人気が集まるものになっているからだ。

最近ではSDGsの取組みが積極的になってきており、環境保全のための材料、例えば放置竹林、食品・飲料品メーカーからの残渣など、これまで活用されてこなかった植物資源からプラスチックの代替商品、焼却してもダイオキシン等の有害物質がでないものなどが注目を集めている。
さらに長く使えることでゴミを減らすことができることから丈夫で修理可能な商品にも人々は関心を寄せている。

例えば、漆器の材料となっている漆(うるし)は堅固であり、丈夫、塗り替えや修理を行うこともでき長く愛用できる。そして近年研究が進み、天然漆に合成樹脂を添加し、ガラスや陶磁器などを始め、ほぼどんなものにも強力に密着する漆も普及してきている。

環境保全のための材料にも当然塗ることが可能である。さらに抗菌・殺菌作用がありコロナウィルス菌などを減少させることもできる。こうした視点では、今ピッタリな材料、解決策になる素材ではないだろうか?
今のニーズに合わせて漆の良さを認知してもらい、輪島塗などの伝統的工芸品を伝える方法があってもいいのではないだろうか。

ところが、新たな技法や材料を使ったものは「伝統的工芸品」としては認められない。確かに、文化や技法を伝承することも重要ではあるが、新たな技法や素材による発展を取り入れていくことに積極的にならなくては、市場ニーズは取り込めない。

今回のランキングからは、「伝統技術」や「伝統工芸」の認識が世の中で変わってきていることの現れといえるだろう。


ポケモンが伝統技術に! アニメや企業とコラボが続々


そうした中で、伝統技術を活かし、若い世代や多くの人へつなげる活動がある。

例えば現在、金沢の国立工芸館にてポケモンと工芸をかけあわせた展示を行っている。ポケモンの姿かたちからしぐさ、気配までを呼び起こした作品。進化や通信、旅の舞台、効果抜群のわざなどゲームの記憶をたどる作品。そして日々を彩る器、着物や帯留など粋な装いに誘い込まれたポケモンたち。

人間国宝から若手まで 20 名のアーティストが本気で挑んだ作品の数々に出会えるだろう。若い世代や海外からも注目されることが予想される。
(会期:2023年3月21日~6月11日。 URL:https://kogei.pokemon.co.jp/

さらにスターバックスコーヒージャパンでは2015年から日本各地の工芸を商品化する「JIMOTO made Series」の取組みを行っている。
「JIMOTO made Series」は地元の産業、素材や職人の技術を取り入れた商品を開発し、その土地の限定店舗のみで販売。商品を通じて地域の文化や産業、地域の人たちのことなどを知り、地元に対する愛着や誇りを感じてほしいという願いが込められている。

第1弾として2015 年に登場したのは、江戸切子の「スターバックス アイスコーヒーグラス」。東京・墨田区にある「すみだ江戸切子館®」の職人が制作し、墨田区の6店舗限定で販売しているほか、現在15地域の商品を展開し、さらに「JIMOTO made(ジモト メイド)」シリーズの展開も行っている。

これらの取り組みのように、伝統工芸を今の若い世代、未来に残すためには世の中のニーズに合わせて、伝統を継承しながらも形を変えて提供することがこれからの「伝統工芸品」に重要になってくるだろう。

連載:地域ブランド調査分析レポート

過去の記事は、弊社が運営するYoutubeチャンネルでも動画記事として公開しております。
是非そちらもご視聴ください。
ブランド総合研究所(Youtube)

地域ブランド調査2022 調査概要

<調査内容>
「地域ブランド調査2022」は、ブランド総合研究所が年1回実施している調査で、2006年にスタートし、今回が第17回目。調査対象は全792市(2022年4月末現在)と東京23区、および地域ブランドへの取り組みに熱心な185の町村を加えた計1000の市区町村、そして47都道府県です。各地域に対して魅力度など全89項目の設問を設け、地域のブランド力を、消費者が各地域に抱く「魅力」として数値化しました。

<調査概要>
・ 調査方法 インターネット調査
・ 回答者 20代~70代の消費者を男女別、各年代別、地域別にほぼ同数ずつ回収し、
日本の縮図になるように、年齢や地域人口の分布にあわせて再集計した
・ 有効回収数 34,768人(一人の回答者に対して市区町村の調査票では20地域、
都道府県については15または16地域を提示し、それぞれについて回答してもらった。
なお、地域ごとの回答者数は都道府県は平均で1,056人、市区町村は平均で632人)
・ 調査対象 全国1,000の市区町村(全792市+東京23区+185町村)と47都道府県
・ 調査時期 2022年6月22日~7月4日
・ 調査項目 認知、魅力、情報接触、観光意欲、居住意欲、情報接触経路(「旅やグルメに関する番組」など14項目)、地域コンテンツの認知(「海・山・川・湖などの地理的名称」など17項目)、訪問経験(「行楽・観光のため」など6項目)、地域資源評価(「街並みや魅力的な建造物がある」など17項目)、地域の特性(「歴史・文化のまち」など14項目)、地域イメージ(「あこがれる」など14項目)、産品想起率(食品、非食品をそれぞれ自由記述)の計89項目 

地域ブランド調査2022ニュースリリース(PDF)はこちらから

関連ページ

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