消費者の5人に1人以上は流通・飲食業界各社のSDGs活動を評価
業界内ではイオンが3連覇、伸び幅では無印良品がトップ
次に、流通・飲食業界36社の中での、SDGs評価を比較した。
「本格的に取り組んでいる」と回答した人を100点、「少し取り組んでいる」を50点、「どちらとも言えない」を0点、「あまり取り組んでいない」をー50点、「全く取り組んでいない」をー100点として、企業ごと加重平均した値を「SDGs評価点」とした。
なお、各社を「名前も知らない」と答えた人は0点とした。
流通・飲食業界内で最も評価が高かったのはイオンで20.5点、前年(18.6点)からは1.9点増加した。
業界内では3年連続1位となり、300社全体でも機械・金属業界のトヨタ自動車(23.6点)に次いで2位だった。
選択肢別では「本格的に取り組んでいる」が14.2%と業界内で最も高く、「少し取り組んでいる」が19.8%で業界内2位と、それぞれ高い評価を得ている。
2位はユニクロで17.4点、こちらも前年(15.9点)から評価を伸ばし、300社全体では5位にランクインした。
選択肢別では「本格的に取り組んでいる」が13.7%で業界内2位、「少し取り組んでいる」が19.9%で業界内1位だった一方、「全く取り組んでいない」が4.6%とこちらも業界内で最も高くなっていた。
3位は無印良品で15.4点、前年(11.0点)からの伸び幅4.4点は業界内で最も大きく、300社全体でも15番目に大きかった。
選択肢別では特に「本格的に取り組んでいる」が10.2%と、前年(6.9%)から大きく増加した。
流通・飲食業界のTOP10に入った企業はすべて、300社全体でも上位50位以内にランクインしただけではなく、前年からSDGs評価そのものも上昇していた。
加えて、今年から調査対象となった2社を除いた34社中27社でSDGs評価が上昇した結果、業界の平均評価点は前年(9.3点)から1.4点増の10.7点となり、300社全体平均(10.2点)を上回った。
※11位以下の企業の結果は、総合報告書に記載
SDGs17ゴール別では「働きがいも、経済成長も」など過半数で高評価
SDGsで設定されている17ゴール別の取組評価を、流通・飲食業界36社平均と、調査対象の全300社平均で比較してみた。
その結果、17あるゴールのうち、運輸・交通業界の平均が300社平均を上回ったのは半数以上の12項目だった。
特に「2.飢餓をゼロに」は4.4%と、300社平均(3.1%)を1.3ポイント上回った。
また、「8.働きがいも、経済成長も」は7.1%と、300社平均(5.9%)を1.2ポイント上回っただけではなく、今回調査対象となった10の業界グループの中で最も平均評価が高かった。
一方、残りの5項目では300社平均を下回った。
特に「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」は4.4%で300社平均(5.5%)とは1.1ポイント、「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」は3.9%で300社平均(4.7%)とは0.8ポイントの差があった。
しかし、企業別に見ると、17あるゴールすべてにおいて、300社全体の上位50位以内に同業界からランクインする企業が出ており、業界全体として取り組みが評価されていないとは言えないのではないか。
各ゴール別に業界内で最も評価が高かった企業を見てみると、イオンは「3.すべての人に健康と福祉を」「8.働きがいも、経済成長も」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」の5項目で業界内トップだった。
特に「17.パートナーシップで目標を達成しよう」は4.0%と、300社全体でも最も評価が高かった。
また、「8.働きがいも、経済成長も」では300社中3位、「15.陸の豊かさも守ろう」では同4位、「14.海の豊かさを守ろう」では同5位と、それぞれ調査対象となった企業全体の中でも評価が高かった。
モスバーガーは2項目で業界トップだった。
加えて、「4.飢餓をゼロに」では300社中4位、「16.平和と公正をすべての人に」では同6位と、それぞれ調査対象となった企業全体の中でも評価が高かった。
ユニクロは「4.質の高い教育をみんなに」と「5.ジェンダー平等を実現しよう」の2項目で業界トップだった。
特に「5.ジェンダー平等を実現しよう」は300社全体の4位にランクインした。
ヤマダデンキは「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の2項目で業界トップだった。
特に「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」においては、300社全体の上位50位以内にランクインした企業は、流通・飲食業界からは同社だけだった。
ニトリは「11.住み続けられる街づくりを」と「12.作る責任、使う責任」の2項目で業界トップだった。
特に「12.作る責任、使う責任」では300社全体の10位にランクインした。
セブン-イレブンは「1.貧困をなくす」で業界トップだっただけではなく、その値は7.8%と、300社全体でも最も評価が高かった。
その他、「13.気候変動に具体的な対策を」ではスターバックスが300社中8位、「10.人や国の不平等をなくそう」ではすかいらーくが同9位とそれぞれランクインし、「6.安全な水とトイレを世界中に」では日本マクドナルドが業界トップだった。
利用経験度ではコンビニ3社が上位独占も、利用状況で違い
流通・飲食業界各社を消費者はどのぐらい利用経験を持っているのか、300社全体の平均と比較してみた。
流通・飲食業界36社それぞれについて、「あなたは各社の商品やサービスを利用したことがありますか」という設問に対し、「個人で利用している」と回答した人は27.3%、「企業・組織で利用している」と回答した人は4.3%、「過去に利用したことがある」と回答した人は17.6%だった(複数回答可)。
300社全体の平均と比較すると、「企業・組織で利用している」(300社平均4.7%)はわずかに下回ったものの、「個人で利用している」(同19.0%)では8.3ポイント、「過去に利用したことがある」では300社平均(同13.5%)では4.1ポイント、それぞれ上回った。
次に、流通・飲食業界36社の中での、利用経験度を比較した。
各社に対して、「個人で利用している」「企業・組織で利用している」「過去に利用したことがある」のいずれかを回答した人の割合を「利用経験度」とした。
その結果、利用経験度が最も高かったのはローソン。
消費者の実に83.1%が、同社の利用経験があると回答した。
次いでセブン-イレブンが81.9%、ファミリーマートが81.5%となり、業界内だけではなく、300社全体においても上位3位をコンビニチェーンが占めた。
以下、業界内6位のイオン(78.2%)までが300社全体のTOP10に、上記を含めた計13社が上位50位以内にランクインした。
その結果、飲料・食品業界36社の平均利用経験度は46.9%と、300社平均(35.1%)を10ポイント以上上回った。
業界内の上位各社に共通していたのが「個人で利用している」消費者の割合の高さで、この選択肢で最も割合が高かったセブン-イレブン(65.6%)を筆頭に、利用経験度とは順位の変動はあるものの、上位9位までの顔ぶれは同じだった。
一方、「企業・組織で利用している」の割合が最も高かったのは伊藤忠商事で5.8%。
同社は利用経験度のランキングでは業界内のTOP10に入らなかったものの、いわゆる「B to B」の形で消費者から利用されていることが伺える。
また、「過去に利用したことがある」の割合が最も高かったのはロイヤルホストで30.6%、すかいらーくが29.1%でそれに続き、飲食店チェーンを運営する企業がワン・ツーを占めた。
3位のイトーヨーカドー(28.5%)までの上位3位は、利用経験度のランキングでは業界内のTOP10には入っていなかった。
いかに一度利用してもらった消費者にまた商品やサービスを利用してもらうかが、利用経験度上昇の鍵と言えるのではないだろうか。
調査概要・報告書のご案内
調査概要
第5回企業版SDGs調査2024は、20歳以上の男女を対象に、2024年9月19日から22日にかけてインターネットで調査を実施し、各社1,000人(1人の回答者には10社について評価)となるように計30,000人の回答を集めた。
不完全回答や信頼度の低い回答は集計対象外としたため、計24,254人を有効回答とした。
調査は各社のSDGs取組の評価、17ゴール別の評価、ESG活動の評価、情報入手経路などについての設問を設けたほか、各社の好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲などについての質問も設け、SDGs活動による各社の企業評価への影響度を分析した。
・調査方法 インターネット調査
・調査対象 47都道府県の登録調査モニター(20歳以上)から年代・性別に均等に回収
・総回収数 計30,000人 (各社1,000人となるように回収)
・有効回答数 計24,254人 (各社の平均回答者数は808人)
・調査時期 2024年9月19日~9月22日
・調査項目 SDGs意識: 購入・利用時のSDGs意識
SDGs評価: SDGs取組評価、ゴール別評価、情報入手経路、ESG活動
企業評価: 企業認知度、好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲
回答者属性: 年齢、性別、婚姻、子供の有無、世帯年収、居住形態など
調査報告書のご案内
・報告書冊子 (価格は税込)
基本セット:165,000円 総合報告書+個別報告書
総合報告書: 99,000円 A4判 約200ページ
個別報告書: 99,000円 A4判 約25ページ (3年分の結果付)
オプション: 各報告書データCDは 33,000円 (調査結果のデータを収録)
・個別調査パッケージ(価格は税込)
追加調査パッケージ: 385,000円 対象企業以外について調査を実施
・報告会・セミナー (価格は税込。交通費、報告書は別途)
調査結果を基にセミナーまたは研修会を実施: 110,000円
2024年調査での流通・飲食業界グループ対象企業一覧(全36社)
イオン、伊藤忠商事、イトーヨーカドー、オイシックス、ケーズデンキ、コジマ、しまむら、ジャパネットたかた、すかいらーく、スターバックス、住友商事、セブン‐イレブン、全国生活協同組合(生協)、双日、ZOZO、大丸松坂屋百貨店、高島屋、ドトールコーヒー、ニトリ、日本マクドナルド、ビックカメラ、ファミリーマート、平和堂、マルイ、丸紅、三井物産、三越伊勢丹、三菱商事、無印良品、モスバーガー、ヤマダデンキ、ユニクロ、ヨークベニマル、ロイヤルホスト、ローソン、ワークマン
(計36社 五十音順)
他の業界・対象企業については、こちらからご覧ください。
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・業界グループ別SDGs評価【建設・不動産】
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・業界グループ別SDGs評価【紙・化学・繊維】
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・業界グループ別SDGs評価【飲料・食品】
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・業界グループ別SDGs評価【機械・金属】
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・業界グループ別SDGs評価【エネルギー】
エネルギー業界はSDGs活動を知らない! 業界内評価はENEOSが1位
・業界グループ別SDGs評価【運輸・交通】
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・業界グループ別SDGs評価【流通・飲食】
イオンがSDGs評価3年連続1位。ユニクロはジェンダー、ニトリは街づくりで業界トップ
・業界グループ別SDGs評価【金融】(近日公開予定)
・業界グループ別SDGs評価【情報・教育・その他】(近日公開予定)
企業評価ランキング紹介記事一覧
・好感度ランキング
好感度は花王が大躍進の1位。味の素、キユーピーが続き、リクルートや山崎製パンが急上昇
・就職意欲度ランキング(近日公開予定)
・投資してみたい企業ランキング(近日公開予定)
・SDGs17ゴール別ランキング(近日公開予定)
本件に関する問合せ先
株式会社ブランド総合研究所
Tel. 03-3539-3011(代) Fax.03-3539-3013
E-mail: sdgs★tiiki.jp (★を半角@に変更しお送りください)
Homepage: http://tiiki.jp
年代、性別が均等になるように抽出した消費者に対し、流通・飲食業界の有力企業各36社それぞれに対して「あなたは各社がSDGs(持続的な開発目標)への取り組みをしていると思いますか」との設問に対し、「本格的に取り組んでいる」と回答した人は8.2%、「少し取り組んでいる」と回答した人は13.0%で、両者を合計すると消費者の5人に1人以上(21.2%)は各社のSDGs活動を評価していた。
300社全体の平均と比較しても、「本格的に取り組んでいる」(300社平均7.9%)と「少し取り組んでいる」(同11.9%)のいずれも上回っており、今回調査対象となった10の業界グループ別では、飲料・食品業界に次いで2番目に評価が高かった。
一方、「あまり取り組んでいない」と回答した人は3.0%(300社平均2.7%)、「全く取り組んでいない」と回答した人は2.5%(同2.3%)と、ネガティブな評価をしている人もそれぞれ300社全体の平均を上回った。