運輸・交通業界のSDGs評価は苦戦も上昇の余地が十分
一方、「あまり取り組んでいない」と回答した人は2.8%(同2.7%)、「全く取り組んでいない」と回答した人は2.2%(同2.3%)だった。
ネガティブな評価をしている人は合計5.0%で、こちらは300社全体の平均とほぼ同じとなった。
業界内1位は2年連続でヤマト運輸、JR西日本は伸び幅で業界トップ
次に、運輸・交通業界37社の中での、SDGs評価を比較した。
「本格的に取り組んでいる」と回答した人を100点、「少し取り組んでいる」を50点、「どちらとも言えない」を0点、「あまり取り組んでいない」をー50点、「全く取り組んでいない」をー100点として、企業ごと加重平均した値を「SDGs評価点」とした。
なお、各社を「名前も知らない」と答えた人は0点とした。
運輸・交通業界内で1位となったのはヤマト運輸。
前年に続いて業界内で最も評価が高く、300社全体では37位だった。
SDGs評価点自体は前年(14.3点)から13.7点に減少しているものの、選択肢別では「本格的に取り組んでいる」が9.4%で業界内3位、「少し取り組んでいる」が16.1%で業界内2位と、それぞれ高い評価を得ている。
2位のANA(全日空)は12.8点で、前年(10.6点)から評価を伸ばした。
同社は特に「本格的に取り組んでいる」が9.9%と業界内で最も高かった。
3位のJR西日本は12.3点、前年(8.2点)からの伸び幅4.1点は業界内で最も大きく、300社全体でも18番目に大きかった。
選択肢別では「本格的に取り組んでいる」が8.2%(前年5.8%)、「少し取り組んでいる」が15.0%(前年13.1%)と、ポジティブに評価する人の割合がそれぞれ増加している。
4位のJR東日本は12.2点、こちらも前年(9.8点)から評価を伸ばした。
同社は特に「少し取り組んでいる」が16.2%と業界内で最も高かった。
今年から調査対象となった6位の日本郵政を除く36社のうち、半数以上の21社で前年からSDGs評価点が増加した。
その結果、業界平均は前年から1.0点増となる8.8点だったものの、300社全体平均(10.2点)を1.4点下回った。
※11位以下の企業の結果は、総合報告書に記載
SDGsゴール別では「気候変動に具体的な対策を」が他の業界より高い評価
SDGsで設定されている17ゴール別の取組評価を、運輸・交通業界37社平均と、調査対象の全300社平均で比較してみた。
その結果、17あるゴールのうち、運輸・交通業界の平均が300社平均を上回ったのは「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、「11.住み続けられる街づくりを」、「13.気候変動に具体的な対策を」の3項目だった。
「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の業界平均は5.6%と、300社平均(4.7%)を0.9ポイント上回った。
業界内で最も評価が高かったのはJR東日本で8.2%、JR西日本(7.9%)、ヤマト運輸(7.8%)がそれに続く。
300社全体では、TOP10入りこそなかったものの、上位50位以内には同業界から12社がランクインした。
「11.住み続けられる街づくりを」の業界平均は4.4%で、300社平均(3.7%)を0.7ポイント上回った。
業界内で最も評価が高かったのはJR東日本で6.5%、次いでJR西日本(6.3%)、JR東海(5.8%)と、業界内の上位3位をJR各社が占めた。
300社全体では、TOP10入りこそなかったものの、上位50位以内には同業界から16社がランクインを果たした。
「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と同様、業界全体としての評価の高さが伺える。
「13.気候変動に具体的な対策を」の業界平均は2.9%で、300社平均(2.6%)と0.3ポイント上回っただけではなく、今回調査の対象となった10の業界グループの中で最も高かった。
業界内で最も評価が高かったのは日本通運で4.8%、同社は300社全体では5位だった。
次いでJR東日本(4.7%)が300社中6位と、300社全体のTOP10に同業界から2社がランクインを果たし、上位50位以内には上記を含めた計11社がランクインした。
一方で、残りの14項目では300社平均を下回った。
その中で「8.働きがいも、経済成長も」の業界平均は5.9%と、17あるゴールの中で最も業界平均が高かったものの、300社平均(5.9%)を小数点2位以下というわずかな差で下回った。
企業別では業界内で最も評価が高かったヤマト運輸(9.0%)が300社中5位、次いで佐川急便が9位と、「2024年問題」による人手不足が懸念されている運送会社2社が、300社全体のTOP10にランクインした。
また、「5.ジェンダー平等を実現しよう」ではANA(全日空)が7.2%で300社中3位、「10.人や国の不平等をなくそう」では日本航空(JAL)が5.2%で300社中6位、「14.海の豊かさを守ろう」では商船三井が4.3%で300社中6位、「16.平和と公正をすべての人に」ではANA(全日空)が3.2%で300社中10位と、企業別では高い評価を受けるゴールも複数あった。
しかし、「1.貧困をなくす」「2.飢餓をゼロに」「3.すべての人に健康と福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「12.作る責任、使う責任」の5項目では、企業別に見ても、300社全体のTOP10はおろか、上位50位以内に同業界の企業が1社もランクインしなかった。
JR東日本やANAなどが人気も、業界全体の就職意欲度は苦戦
次に、運輸・交通業界各社に対して、消費者がどのぐらい就職意欲を持っているのか、300社全体の平均と比較してみた。
運輸・交通業界37社それぞれについて、「あなた自身または家族や知人にとって、各社は「働きたい(働くのを勧めたい)」と思いますか」という設問に対し、「ぜひ働きたい(ぜひ勧めたい)」と回答した人は5.2%、「働いてもいい(勧めてもいい)」と回答した人は8.4%だった。
両者を合計すると、13.6%の消費者は運輸・交通業界各社に自身または周辺の人が就職することに対して好意的だった。
一方、「あまり働きたくない(あまり勧めたくない)」と回答した人は5.3%、「働きたくない(勧めたくない)」と回答した人は13.6%で、否定的な消費者は合計18.9%となり、好意的な消費者を上回った。
特に「ぜひ働きたい(ぜひ勧めたい)」と回答した人の割合は、今回調査対象となった10の業界グループの中で最も低かった。
次に、運輸・交通業界37社の中での、就職意欲度を比較した。
「ぜひ働きたい(ぜひ勧めたい)」と回答した人を100点、「働いてもいい(勧めてもいい)」と回答した人を50点、それ以外の回答をした人を0点として、企業ごとに加重平均した値を「就職意欲度」とした。
運輸・交通業界で最も就職意欲度が高かったのはJR東日本で14.2点。
300社全体では35位にランクインした。
同社は特に「働いてもいい(勧めてもいい)」が15.0%と、業界内の次点に2ポイント以上の差をつけて最も高かった。
2位はANA(全日空)で13.9点。
同社は特に「ぜひ働きたい(ぜひ勧めたい)が7.7%と業界内で最も高かった。
上位2社は、300社全体の上位50位以内にランクインした。
3位はJTBで13.1点。
同社は「ぜひ働きたい(ぜひ勧めたい)」が6.8%で業界内4位、「働いてもいい(勧めてもいい)」が12.5%で業界内3位と、それぞれ高い評価を受けた。
しかし、運輸・交通業界37社のうち、300社全体の平均就職意欲度(10.9点)を上回ったのは上位8社にとどまり、業界平均では9.4点と1.5点の差があった。
物流業界における「2024年問題」をはじめとした人手不足の現状が、業界全体に対する就職意欲度からも伺える。
調査概要・報告書のご案内
調査概要
第5回企業版SDGs調査2024は、20歳以上の男女を対象に、2024年9月19日から22日にかけてインターネットで調査を実施し、各社1,000人(1人の回答者には10社について評価)となるように計30,000人の回答を集めた。
不完全回答や信頼度の低い回答は集計対象外としたため、計24,254人を有効回答とした。
調査は各社のSDGs取組の評価、17ゴール別の評価、ESG活動の評価、情報入手経路などについての設問を設けたほか、各社の好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲などについての質問も設け、SDGs活動による各社の企業評価への影響度を分析した。
・調査方法 インターネット調査
・調査対象 47都道府県の登録調査モニター(20歳以上)から年代・性別に均等に回収
・総回収数 計30,000人 (各社1,000人となるように回収)
・有効回答数 計24,254人 (各社の平均回答者数は808人)
・調査時期 2024年9月19日~9月22日
・調査項目 SDGs意識: 購入・利用時のSDGs意識
SDGs評価: SDGs取組評価、ゴール別評価、情報入手経路、ESG活動
企業評価: 企業認知度、好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲
回答者属性: 年齢、性別、婚姻、子供の有無、世帯年収、居住形態など
調査報告書のご案内
・報告書冊子 (価格は税込)
基本セット:165,000円 総合報告書+個別報告書
総合報告書: 99,000円 A4判 約200ページ
個別報告書: 99,000円 A4判 約25ページ (3年分の結果付)
オプション: 各報告書データCDは 33,000円 (調査結果のデータを収録)
・個別調査パッケージ(価格は税込)
追加調査パッケージ: 385,000円 対象企業以外について調査を実施
・報告会・セミナー (価格は税込。交通費、報告書は別途)
調査結果を基にセミナーまたは研修会を実施: 110,000円
2024年調査での運輸・交通業界グループ対象企業一覧(全37社)
アート引越センター、ANA(全日空)、大塚倉庫、小田急電鉄、近畿日本鉄道、京王電鉄、京成電鉄、京阪電気鉄道、京浜急行電鉄、相模鉄道、佐川急便、JTB、JR九州、JR四国、JR東海、JR西日本、JR東日本、JR北海道、商船三井、西濃運輸、西武鉄道、東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、東武鉄道、名古屋鉄道、西日本鉄道、日本通運、日本郵政、日本郵船、日本航空(JAL)、日本旅行、阪急電鉄、阪神電気鉄道、三菱倉庫、ヤマト運輸、ロジスティード(日立物流)
(計37社 五十音順)
他の業界・対象企業については、こちらからご覧ください。
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・業界グループ別SDGs評価【エネルギー】
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本件に関する問合せ先
株式会社ブランド総合研究所
Tel. 03-3539-3011(代) Fax.03-3539-3013
E-mail: sdgs★tiiki.jp (★を半角@に変更しお送りください)
Homepage: http://tiiki.jp
年代、性別が均等になるように抽出した消費者に対し、運輸・交通業界の有力企業各37社それぞれに対して「あなたは各社がSDGs(持続的な開発目標)への取り組みをしていると思いますか」との設問に対し、「本格的に取り組んでいる」と回答した人は7.0%(300社平均7.9%)、「少し取り組んでいる」と回答した人は10.9%(同11.9%)と、各社のSDGs活動を評価している人はそれぞれ300社全体の平均を下回った。
特に「本格的に取り組んでいる」と回答した人は、今回調査を実施した10の業界グループの中で最も低かった。
ただ、「知らない、わからない」と回答した人が31.4%と300社平均(26.4%)を上回っており、各社が取り組むSDGs活動そのものが相対的に認知されていないことも、要因の一つである可能性がある。