「全く取り組んでいない」は他業界より少ない!
業界内では花王が5連覇、第一三共は前年から急上昇
では、紙・化学・繊維業界39社の中でSDGs評価が高いのはどの企業か・・・。
「本格的に取り組んでいる」と回答した人を100点、「少し取り組んでいる」を50点、「どちらとも言えない」を0点、「あまり取り組んでいない」をー50点、「全く取り組んでいない」をー100点として、企業ごと加重平均した値を「SDGs評価点」として、各社の評価を比較してみた(各社を「名前も知らない」と答えた人は0点とした)。
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紙・化学・繊維業界の1位となったのは花王。2020年の調査開始以来、5年連続で業界内で最も高かっただけではなく、300社全体でも3位となった。
加えて、SDGs評価点は前年(14.1点)から4.6点増加して18.6点となり(小数点2位以下の差による)、伸び幅は業界内で3番目、300社全体でも10番目に大きかった。
選択肢別に見ると、「本格的に取り組んでいる」が11.7%、「少し取り組んでいる」が20.4%と、それぞれ業界内で最も高い評価を受けた。
2位の資生堂はSDGs評価点こそ花王に届かなかったものの、こちらも前年(12.5点)から15.8点へと3.3点増加している。
選択肢別では「本格的に取り組んでいる」が10.0%で業界内3位、「少し取り組んでいる」が17.4%で業界内2位だった。
3位の旭化成は12.9点、前年(12.4点)から0.5点増加している。
同社は「あまり取り組んでいない」と「全く取り組んでいない」がそれぞれ1%台と、ネガティブな評価をした人が少なかった。
注目したいのは8位の第一三共。SDGs評価点は前年(6.4点)から倍近く増加した12.2点となり、その伸び幅は業界グループ内で最も大きく、300社全体の中でも4番目に伸びが大きかった。特に「本格的に取り組んでいる」と評価が前年(4.3%)から倍以上の増加となる8.9%となったことが大きかった。
TOP10の企業すべてに加えて、業界グループ全39社中33社が、前年からSDGs評価点を増加させた。その結果、業界グループ39社の平均評価点は10.5点となり、300社全体平均(10.2点)を上回った。
※11位以下の企業の結果は、総合報告書に記載
SDGsゴール別では「すべての人に健康と福祉を」など5つで全体平均を上回る
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SDGsで設定されている17ゴール別の取組評価を、紙・化学・繊維業界39社平均と、調査対象の全300社平均で比較してみた。
その結果、17あるゴールのうち、紙・化学・繊維業界で最も評価平均が高かったのは「3.すべての人に健康と福祉を」の5.8%で、300社平均(4.5%)を1.3ポイント上回った。
また、「12.作る責任、使う責任」は5.5%で300社平均(4.8%)を0.7ポイント、「6.安全な水とトイレを世界中に」は3.9%で300社平均(3.3%)を0.6ポイント、それぞれ上回った。
ゴール別で300社平均を上回ったのは上記に加え、「4.質の高い教育をみんなに」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」の計5項目だった。
「3.すべての人に健康と福祉を」の評価が紙・化学・繊維業界で最も高かったのは第一三共で12.5%、これは300社全体の中でもヤクルト(12.8%)に次いで2番目に高かった。
以下、大塚製薬(12.4%)が3位、エーザイ(12.1%)が4位、シオノギ製薬(11.1%)が5位、花王(10.8%)が6位、武田薬品工業(10.6%)が7位、久光製薬(10.5%)が9位と、300社全体のTOP10のうち、実に7社が同業界からランクインした。
「4.質の高い教育をみんなに」で最も評価が高かったのは資生堂で5.5%、同社は300社全体の中では7位だった。
次いで久光製薬が5.4%で9位にランクインした。
「6.安全な水とトイレを世界中に」で最も高かったのはTOTOで12.8%、同社は300社全体の中でも1位だった。
以下、花王(8.8%)が3位、LIXIL(8.1%)が4位、大王製紙(6.8%)が5位、王子製紙(6.1%)が7位と、300社全体のTOP10のうち5社が、同業界からランクインした。
「12.作る責任、使う責任」で最も評価が高かったのは花王で7.7%、同社は300社全体の中では16位だった。
同業界から300社全体のTOP10に入る企業はなかったものの、上位50位以内には9社がランクインした。
「17.パートナーシップで目標を達成しよう」で最も評価が高かったのはアシックスで3.1%、同社は300社全体の中では8位にランクインした。
一方で、残りの12項目では300社平均を下回った。
特に、「2.飢餓をゼロに」は2.2%(300社平均3.1%)となり、300社平均とは0.9ポイントの差があった。
各項目の300社全体順位を見ると、「1.貧困をなくす」と「10.人や国の不平等をなくそう」の2項目では、TOP10はおろか、上位50位以内に同業界の企業が1社もランクインしなかった。
また、「5.ジェンダー平等を実現しよう」では、業界全体の平均(3.5%)は300社平均(3.6%)を下回ったものの、企業別では300社全体の1位が資生堂(7.5%)、2位がワコール(7.3%)と、同業界の企業がワン・ツーとなった。
商品やサービスの信頼度に対する評価が高く、地域貢献に対する評価が低い
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次に、11項目の具体的な企業活動(ESG活動)に対する評価を、紙・化学・繊維業界各社と300社全体の評価平均で比較してみた。
11項目のESG活動のうち、紙・化学・繊維業界39社の評価平均が最も評価が高かったのは「商品やサービスが信頼できる」の9.9%で、300社平均の9.3%を上回った。
また、「科学技術の発展に貢献している」は4.1%(300社平均3.4%)で、300社平均を最も上回った。
更に、先ほどのSDGs17ゴールの「5.ジェンダー平等を実現しよう」では300社平均を下回った一方で、ESG活動の「女性が活躍している」では300社平均を上回った。
300社平均を上回ったのは上記に「スポーツや文化活動に熱心」を加えた計4項目だった。
「女性が活躍している」の評価が紙・化学・繊維業界で最も高かったのは資生堂が14.7%、次いでワコールが14.6%、上記2社は300社全体の中でもワン・ツーとなった。
続く花王(9.0%)が7位、ファンケル(8.6%)が9位となった。
「スポーツや文化活動に熱心」で最も評価が高かったのはミズノの13.9%、次いでアシックスの11.8%だった。こちらも業界内の上位2社が、300社全体の中でもワン・ツーとなった。
「科学技術の発展に貢献している」で最も評価が高かったのは富士フイルムで8.3%、同社は300社全体の中でも5位だった。
上記をはじめ、上位50位以内には同業界から8社がランクインした。
「商品やサービスが信頼できる」で最も評価が高かったのはTOTOで17.6%、同社は300社全体の中でも8位だった。
上記をはじめ、上位50位以内には同業界から7社がランクインした。
残りの7項目では300社平均を下回った(一部小数点2位以下の差による)。
中でも「地域に貢献している」の項目では4.0%にとどまり、300社平均(5.6%)とは1.6ポイントの差があった。
この項目では企業別に見ても、300社全体の上位50位のうち、同業界からランクインした企業が1社もなかった。
一方、「環境に配慮している」では花王(14.0%)が300社中4位、「高齢者や障がい者に優しい」では久光製薬(5.3%)が8位に入るなど、業界平均が300社平均を下回っていても、企業別では同業界の企業が高い評価を受けている項目も見られた。
調査概要・報告書のご案内
調査概要
第5回企業版SDGs調査2024は、20歳以上の男女を対象に、2024年9月19日から22日にかけてインターネットで調査を実施し、各社1,000人(1人の回答者には10社について評価)となるように計30,000人の回答を集めた。
不完全回答や信頼度の低い回答は集計対象外としたため、計24,254人を有効回答とした。
調査は各社のSDGs取組の評価、17ゴール別の評価、ESG活動の評価、情報入手経路などについての設問を設けたほか、各社の好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲などについての質問も設け、SDGs活動による各社の企業評価への影響度を分析した。
・調査方法 インターネット調査
・調査対象 47都道府県の登録調査モニター(20歳以上)から年代・性別に均等に回収
・総回収数 計30,000人 (各社1,000人となるように回収)
・有効回答数 計24,254人 (各社の平均回答者数は808人)
・調査時期 2024年9月19日~9月22日
・調査項目 SDGs意識: 購入・利用時のSDGs意識
SDGs評価: SDGs取組評価、ゴール別評価、情報入手経路、ESG活動
企業評価: 企業認知度、好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲
回答者属性: 年齢、性別、婚姻、子供の有無、世帯年収、居住形態など
調査報告書のご案内
・報告書冊子 (価格は税込)
基本セット:165,000円 総合報告書+個別報告書
総合報告書: 99,000円 A4判 約200ページ
個別報告書: 99,000円 A4判 約25ページ (3年分の結果付)
オプション: 各報告書データCDは 33,000円 (調査結果のデータを収録)
・個別調査パッケージ(価格は税込)
追加調査パッケージ: 385,000円 対象企業以外について調査を実施
・報告会・セミナー (価格は税込。交通費、報告書は別途)
調査結果を基にセミナーまたは研修会を実施: 110,000円
2024年調査での紙・化学・繊維業界グループ対象企業一覧(全39社)
旭化成、アシックス、アストラゼネカ、エーザイ、AGC、王子製紙、大塚製薬、オンワード、花王、カネカ、サラヤ、シオノギ製薬、資生堂、住友化学、住友ゴム工業、積水化学工業、第一三共、大王製紙、武田薬品工業、田辺三菱製薬、帝人、DIC、東レ、TOTO、日本ガイシ、日本製紙、久光製薬、ファンケル、富士フイルム、ブリヂストン、ミズノ、三井化学、三菱ケミカル、三菱マテリアル、UBE(宇部興産)、ユニ・チャーム、横浜ゴム、LIXIL、ワコール
(計39社 五十音順)
他の業界・対象企業については、こちらからご覧ください。
本件に関する問合せ先
株式会社ブランド総合研究所
Tel. 03-3539-3011(代) Fax.03-3539-3013
E-mail: sdgs★tiiki.jp (★を半角@に変更しお送りください)
Homepage: http://tiiki.jp
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・「第5回企業版SDGs調査2024」の調査の目的と評価項目
業界別結果
・調査結果概要(全300社)
消費者によるSDGs評価はトヨタが1位。イオンが2位浮上(企業版SDGs調査2024)
・業界グループ別SDGs評価【電機・電子】
ソニー、パナソニック、セイコー、消費者が評価するSDGs活動
・業界グループ別SDGs評価【建設・不動産】
住友林業や積水ハウス、建設・不動産業界のSDGs活動に対する消費者の評価
・業界グループ別SDGs評価【紙・化学・繊維】
花王は好感度が全企業1位、資生堂は女性活躍で1位。企業の評価に特徴
・業界グループ別SDGs評価【飲料・食品】
SDGs評価はサントリーが4連覇、山崎パンは急上昇。味の素やキユーピーは好感度高い
・業界グループ別SDGs評価【機械・金属】
トヨタ自動車が全300社中1位、企業そのものの認知度も影響する機械・金属業界のSDGs評価
・業界グループ別SDGs評価【エネルギー】
エネルギー業界はSDGs活動を知らない! 業界内評価はENEOSが1位
・業界グループ別SDGs評価【運輸・交通】
ヤマト運輸がSDGs評価トップ、JR東日本やANAが就職意欲度で高評価
・業界グループ別SDGs評価【流通・飲食】
SDGs評価ではイオンが3連覇、利用経験度はコンビニ各社が上位も利用状況で違い
・業界グループ別SDGs評価【金融】
SDGs評価ではオリックスが1位、みずほ銀行は急上昇。認知度では企業名が先行する傾向
・業界グループ別SDGs評価【情報・教育・その他】
全企業の中で最も伸びたNTTドコモがSDGs評価1位。投資意欲では過去と未来で企業に違い
企業評価項目別ランキング
・好感度ランキング
好感度は花王が大躍進の1位。味の素、キユーピーが続き、リクルートや山崎製パンが急上昇
・就職意欲度ランキング(近日公開予定)
・投資してみたい企業ランキング(近日公開予定)
SDGs17ゴール別ランキング
①「貧困をなくす」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」
②「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」(近日公開予定)
③ 「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「働きがいも、経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」(近日公開予定)
④ 「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられる街づくりを」「作る責任、使う責任」(近日公開予定)
⑤ 「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」(近日公開予定)
⑥ 「平和と公正をすべての人に」「パートナーシップで目標を達成しよう」「17ゴール評価の合計」(近日公開予定)
年代、性別が均等になるように抽出した消費者に対し、紙・化学・繊維業界の有力企業各39社それぞれに対して「あなたは各社がSDGs(持続的な開発目標)への取り組みをしていると思いますか」との設問に対し、「本格的に取り組んでいる」と回答した人は7.8%、「少し取り組んでいる」は11.6%で、各社のSDGs活動を評価している人は合計19.4%だったた。
特出すべきなのは、「全く取り組んでいない」と回答した人は1.9%で、これは10の業種グループの中で最も少なかった。調査対象となった39社の中で3%を超えている企業が1社もないことから、同業種グループでは総じて否定的な評価が少ないと言える。