経済産業省は産業構造審議会の総会を開き、2015年度の重点政策として、安倍政権の効果を各地に普及させる「ローカル・アベノミクス」を推進するため、地域の中小企業の成長を促して雇用を生み出し、地域経済の活性化策を強化する方針が提示された。
地域経済再生としては、次の5つの戦略で構成されている。
- 地域の産業集積の競争力向上
- 地域発のベンチャー企業の育成
- 地域サービス業の生産性向上・市場創出
- 地域全体のブランド化
- 生活サービスの確保と地域経済圏の再構築
上記戦略1~3は雇用や仕事を作るための戦略で、4~5はまちの機能を維持・活性化するための戦略と位置付けられている。具体的には、
戦略1は、(1)大企業の地方拠点の機能強化、地方での採用増、地方への人の流れの促進、(2) 海外企業の地方への投資促進、(3)地域の中核企業を引き上げ、産業の裾野を拡大、などによって、中堅・中小企業の付加価値額を大企業を上回るまでに押し上げ、年3%以上の成長を確保することを目標としている。
戦略2は、将来の中核企業となるベンチャーの地方での育成、大企業の地方企業との取引拡大やスピンオフの活用などによって、2025年までにベンチャー企業の付加価値額が全体の15%に到達することを目標としている。
戦略3は、労働力不足と地域経済の7割を占めるサービス業の生産性向上への対応 (ロボット・ITや女性・高齢者の活用)などによって、小規模企業(数は減少する)の生産性を年率2%向上させることを目標としている。
戦略4は、地域に根ざす地域資源を活用した地域のブランド化と付加価値向上、域外展開と域内消費の拡大をめざす。
戦略5は、人口減少下での(1)地域の安全・安心を支える基盤的な生活サービスの確保、(2)持続可能な地域経済圏の再構築・地域経済を支える中核企業の分布分析・医療・介護等やインフラの選択的集中・人口規模に応じたコンパクトシティ化 などを目指す。
これらの5つの戦略により、大企業の地方拠点の機能強化や、地域の中核企業の育成などにつなげ、雇用創出や地域経済の活性化につなげるのが主旨。そのため、安倍政権では新たに地方創生担当大臣を置き、9月上旬に「まち・ひと・しごと創生本部」を設立し、省庁連携で地域経済活性化や人口減少問題に向けた政策を展開していく。
上記「戦略4」において、同審議会総会で配られた資料の中には、具体的に(1)市町村と一体となった消費者に訴求する地域ブランド開発への支援、(2)商品開発から販路開拓までを一貫して行える人材の育成、(3)地域視点でのクールジャパンの推進などが挙げられているが、これでは従来までの農商工連携などの商品開発の域を出ていない。今回の目標が「地域全体のブランド化」を目標として掲げられているにも関わらず、こうした「地域全体」としての視点が不足しているのが気になる。
「地域ブランド」とは、地域における「商品ブランド」のことではなく、観光や農業、まちづくりなどを包括した、地域全体のブランド化であることを視野に置き、地域活性化や人口減少対策につながるような政策につなげていくような方向性をもつことを、切に望みたい。
(文責:田中章雄ブランド総合研究所社長)