うどん県に県名を変更するというPR戦略で注目を集めた香川県。そもそも讃岐うどんのブームは過去に3回あったと言われている。
最初のブームは1970年の大阪万博に向けて県がキャラバン隊を組織し、当時の金子知事が船頭を取ってPR展開をしたのをきっかけに始まった。
2度目は1988年の瀬戸大橋の開通で観光客が急増した際に、地域食としてのうどんが注目された。そして3回目が2011年に始まったキャンペーン企画「うどん県」というわけだ。
香川県出身の俳優、要潤が副知事役に扮して、県名を「うどん県」に改名するという架空の記者発表をするという内容。この動画が特設サイトなどに掲載やいなや、アクセスが集中して一時はサーバーがダウンするなどの大きな反響を呼んだ。
その後、讃岐うどんをテーマにした映画「UDON」の上映などもあったほか、本物の県知事や職員の名刺に「うどん県」と表示したり、フェリーやバスの行先表示が「うどん県」と表示されたりするなど、取り組みは現実社会にも波及していった。県内の老舗うどん店やセルフ型のうどん店、製麺所に行列ができるようになり、観光集客の増加にもつながった。
2010年に37位だった認知度は、順調に順位を上げて13年には24位へと上昇した。同様に魅力度は10年に29位だったのが、12年には23位まで上昇、観光意欲は10年の27位から13年には20位へといずれも上昇した。そして「食事がおいしい」のイメージ評価も10年の13位から13年には9位へと上昇だ。
これらの指標の動向をみる限りは、「うどん県」の取り組みはまさに成功したと言えるだろう。
その一方で、2013年以降は、観光意欲度を除くとあまり芳しい状況ではない。観光意欲度は15年は17位へと今も上昇を続けているが、15年の認知度は35位、魅力度は33位へと順位を落としている。まさに「ポストうどん県」の取り組みが熱望される状況だ。
◆和三盆や、しょう油オリーブも
香川県にはうどん以外にも讃岐三畜(讃岐牛、讃岐夢豚、讃岐コーチン)のほか、讃岐和三盆糖、小豆島醤油、オリーブ、しょうゆ豆など特産品が多い。
讃岐和三盆はきめ細やかさを持ち、微量の糖蜜が残っていることから淡く黄色がかった、まろやかな甘さが特徴の砂糖。和菓子だけではなく日本料理や洋菓子の高級食材として人気がある。
江戸時代の享保の改革で徳川吉宗がサトウキビの栽培を奨励した際に、高松藩での取り組みが始まった。当時は精糖の方法が極秘とされていたため、高松藩で独自開発を行い、1700年代末に精糖方法を確立させた。これが香川県で生産されている讃岐和三盆糖で、「盆の上で砂糖を三度研ぐ」という独自の精糖工程から「和三盆」と呼ばれるようになった。
食以外ではミシュラン観光ガイドに最高評価の3つ星に選定され、国の特別名勝にも指定されているている栗林公園(園内は松を使った日本庭園で、栗の林はない)、「こんぴらさん」こと金刀比羅宮、空海の生誕地として知られる善通寺、観音寺の銭形砂絵など、人気の高い観光地が多い。
「お遍路」こと四国八十八か所の札所には、日本人に混じって外国人観光客も増加している。そして、丸亀うちわや、楽器としても用いられた音の鳴る石「カヌサイト」など特産品も数多い。
◆四国や瀬戸内海への波及に期待
実は、前出のうどん県のキャッチフレーズは、「うどん県。それだけじゃない香川県」というもので、うどん以外のこうした観光資源にも注目してもらいたいという願いはあった。しかし、インパクトが強烈過ぎてしまい、うどんばかりが着目されるという事態になってしまったため、今後はいかに他の産品や産業に波及させるかが重要となる。
ブランド化にはイメージリーダーは重要。ただし、それと他の資源を連動させ、いかに波及させるかが地域活性化の鍵となる。
香川県は四国と本州とを瀬戸大橋で結ぶ結節点だけに、お遍路で注目されている四国の他県や、瀬戸大橋でつながる瀬戸内海地方などと広域で連携しての「四国ブランド」や「瀬戸内海ブランド」としての取り組みも、これからますます期待されていくだろう。
◆香川県の主要項目 (かっこ内は昨年の値。△は上昇した項目)
- 認知度 35位(32)
- 魅力度 33位(26)
- 情報接触度 34位(31)
- 居住意欲度 21位(29)△
- 観光意欲度 17位(18)△
- 産品購入意欲度 7位
◆香川県の主なイメージ項目
- 自然が豊か 36位(33)
- 美術館や博物館 14位(43)△
- 食事がおいしい 10位(13)△
- 土産や地域産品 11位( 5)
- 商店街や店舗 21位(39)△
- 環境にやさしい 10位(38)△
- デザインやセンス 12位(10)
地域ブランド調査の結果は http://news.tiiki.jp/survey2015 のページに掲載)
執筆・文責:田中章雄 (ブランド総合研究所社長)
(※この記事は、週刊ダイヤモンド2016年1月23日号に掲載したの記事を、筆者が加筆・修正したものです。
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