南北に走る奥羽山脈と阿武隈高地によって、会津、中通り、浜通りの3地域に分けられる福島県。県民の気質は会津では少し頑固で正義感が強く、人情に厚い人が多い一方で、浜通りは明るく開放的な人が多いと言われる。
会津地域は豪雪地帯が多く、地域人口は約27万人と多くはないが、水質日本一の猪苗代湖など人気観光地が多い。「鶴ヶ城」と呼ぶ若松城の城下町として栄えた会津若松市には、会津塗や赤ベコ、起き上がり小法師など江戸時代から伝わる伝統的な産品が多く、日本酒の酒蔵も多い。市区町村の魅力度が全国50位で、県内で最も高い。同市に接しているのが蔵とラーメンの町・喜多方市で、同じく全国104位で県内2位だ。
中通りは奥州の玄関口として街道沿いに発展しており、行政機能が集中する福島市と、商業・内陸工業地帯となっている郡山市が中心だ。両市とも人口は30万人を超えており、地域で約115万人と県人口の約6割を占めている。全国有数の果物果樹の生産地でもある。特に桃は有名で、皇室への献上桃として指定されているほどの品質が自慢だ。
浜通りは太平洋側にあって、冬でも雪はほとんど降らない。県内最大面積であるいわき市が中心で、地域人口は約50万人。同市にある「スパリゾートハワイアンズ」は温水プール、温泉、ホテル、ゴルフ場などの大型レジャー施設で、かつて炭鉱で湧き出ていた温泉水を利用した施設として1966年に開業した。「夢の島ハワイ」をイメージしており、フラダンスの公演が毎日行われ、年間150万人もの来場者を集めている。
■震災でイメージは低下せず
福島県の魅力度の推移をみると、東日本大震災のあった2011年の魅力度の順位は35位と、10年の33位よりわずかに低下したが、点数は12.6点で、10年の12.3点より上昇している。
地域イメージも、自然や歴史、おもてなしなどの項目が上昇しており、震災で魅力が大きく低下したわけではない。
一方、観光意欲度に関しては震災の影響は大きく、11年は順位、点数ともに大きく低下してしまったが、13年には震災前とほぼ同水準にまで大きく上昇した。その要因としては、会津地域が舞台となったNHK大河ドラマ「八重の桜」が挙げられる。会津出身の新島八重の生涯を描いた作品で、鶴ヶ城での撮影が行われたほか、会津武家屋敷や土津神社など会津地域の観光名所も紹介された。
11年には1538万人と落ち込んでいた会津地域の観光者数も、13年には1956万人と大幅に増加し、10年の1883万人を上回った。
観光復興は他地域でも進んでいる。例えばスパリゾートハワイアンズの来場者数は、11年は長期間の休業の影響があり35万人と10年の180万人から大幅に落ち込んだが、13年は192万人と震災前を上回った。
このように、震災の影響は2015年にはかなり薄れており、逆に以前より高まっているイメージ項目も少なくない。そのけん引役となっているのは20代などの若い世代だ。ボランティアなどを通して福島の魅力を体感したという意見も多い。
ところが、せっかく高まった観光意欲度が、14年の29位から15年には42位と大きく低下してしまった。イメージ16項目中13項目で低下していることから、全般的にイメージが弱まっていることがわかる。
これらの結果から、対消費者のイメージ面での復興の段階は15年までに終わったということになる。今後は新たな魅力づくりに取り組むことが必要である。
◆福島県の主要項目 (かっこ内は昨年の値。△は上昇した項目)
- 認知度 19位(16)
- 魅力度 42位(29)
- 情報接触度 6位(4)
- 居住意欲度 39位(35)
- 観光意欲度 42位(37)
- 産品購入意欲度 41位
◆福島県の主なイメージ項目
- 自然が豊か 28位(19)
- 温泉やレジャー施設 30位(22)
- 土産や地域産品 32位(40)
- 食材が豊富 26位(15)
- 食事がおいしい 42位(28)
- おもてなしがよい 9位(12)△
- 祭りやイベント 19位(17)
地域ブランド調査の結果や内容は http://news.tiiki.jp/survey2015 のページに掲載)
執筆・文責:田中章雄 (ブランド総合研究所社長)
(※この記事は、週刊ダイヤモンド2016年2月20日号に掲載したの記事を、筆者が加筆・修正したものです。
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