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長崎県(6位) 軍艦島効果は龍馬を上回った!

長崎県(6位) 軍艦島効果は龍馬を上回った!

長崎県の魅力度は15年には6位と14年の10位から大幅に上昇した。その原動力となったのは、通称「軍艦島」の端島であるのは明白だ。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」が世界遺産に登録されたが、そのシンボル的な存在になっている。「軍艦島上陸・周遊ツアー」は毎回満席の人気となっている。

温泉と書いて「うんぜん」と呼んでいた。そこから「雲仙」という地名になったという。

キリシタン殉教の舞台で世界的に有名な雲仙温泉は長崎県の島原半島にあるが、ここは1934年に日本初の国立公園に指定された温泉保養地でもある。雲仙普賢岳のある島原半島は地球科学的な特徴が認められて2009年には日本最初のジオパークにも認定されている。

周囲を海に囲まれた長崎県には、対馬、壱岐、五島列島などの島が971もあり、その数は日本で最も多い。海岸線の長さは4137キロ㍍で北海道より長い(北方領土を除く)というから驚きだ。

こうした複雑な地形のおかげで、長崎県には豊富な水産物が獲れる。アジやタイ、フグなどの漁獲量はいずれも日本一で、その他の魚種も含めた総漁獲量は全国2位。農作物ではイチゴ、ミカン、ジャガイモなどの収穫量も多い。びわの出荷量は1位で、茂木びわは古くから高く評価されている。

ところが消費者からの評価は必ずしも高くはない。「食材が豊富」のイメージは29位で、全国の中位以下でしかない。これは「長崎みかん」のように商品名の前に「長崎」という地名を付加した名称を「長崎ブランド」として展開している反動かもしれない。

商品名に県名をつければ、長崎県が産地であることを伝えることはでき、数量もまとめて流通させることは可能になる。その一方で五島列島や島原半島など、多彩な地域の特徴は伝わらない。ワインや米のように、産地が狭く限定された方が特徴を明確にしやすく、高値で扱われることも多い。2015年から地理的表示法が施行され、全国各地で産地名を付けた高付加価値な産品化に取り組んでいる。多彩な地形と高質な産品が多い長崎県も、質と特徴で差別化する戦略にも本気で取り組むべきではないだろうか。

◆軍艦島効果は、龍馬効果を上回った

長崎県の魅力度は15年には6位と14年の10位から大幅に上昇した。その原動力となったのは、通称「軍艦島」の端島であるのは明白だ。

「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」が世界遺産に登録されたが、そのシンボル的な存在になっている。「軍艦島上陸・周遊ツアー」は人数限定ということもあり、ほぼ毎回満席の人気となっている。

この世界遺産は山口県、福岡県など8県に点在しているが、魅力度の上昇効果が端的に表れたのは、長崎県だけだ。これはブランド特有の現象である。一つのシンボル的な要素があったとき、それの影響がもっとも印象的なものに集中するのだ。

だからこそ、ブランド戦略では「オンリーワン」または「ナンバーワン」でなければならないと言われる。2番目ではブランドへの効果が極端に薄れてしまうのだ。まさに今回の軍艦島の世界遺産効果は典型的な例だ。

さて、長崎県の過去の魅力度の推移をみると、2011年から12年にかけて大きく高まったことがあった。これはNHK大河ドラマ「龍馬伝」が放映され、そのブームにあやかって長崎県の魅力度や観光意欲が11位から9位へと上昇した。今回は6位と、その時を上回る過去最高の魅力度となったことから、龍馬伝の時以上の効果があったということができるだろう。

◆長崎さるくがロイヤルティ向上に貢献

もちろん、長崎県のイメージは軍艦島だけではない。「街並みや歴史建造物」のイメージは3位、「歴史人物」は4位など、歴史に対する評価は極めて高い。それゆえに、歴史につながるような食や産品に人気が集まっている。

円卓を囲んで大皿を取り分けて食べる宴会料理の「しっぽく料理」や、長崎チャンポン、皿うどん、角煮まんじゅうなどは欧米や中国文化が影響して生まれた長崎特有の食文化だ。お土産品としては定番の長崎カステラ以外にも、九十九島せんぺい、ピードロなどの特産品もある。

長崎市にはグラバー邸や出島など、鎖国時代から引き継がれている観光名所が豊富にあり、それを求めて多くの観光客が集まっている。今回の世界遺産のテーマである「明治の産業遺産」は、こうした長崎の魅力そのものであったため、消費者の心に響きやすかったのだろう。

それゆえに、こうした長崎の歴史や文化を「強味」として商品化や観光メニュー化するのは、シティプロモーションや観光戦略としても得策と言える。ただし、軍艦島が単なる「ブーム」で終わってしまうなら、その効果は長続きしない。ブームではなく、長崎県のロイヤルティ(顧客満足度)向上につながらなければならない。

仮に、龍馬や軍艦島などの名称だけを活用した商品化が蔓延すると、商品寿命も短くなり、イメージも低下してしまう。これはブームによるイメージの消費につながり、年々その魅力は低下してしまうから要注意だ。

一方で、長崎市を中心に取り組まれている街歩きツアー「長崎さるく」は観光客が観光ボランティアなどの住民と一緒に歴史や文化などを味わう素晴らしい取り組みとして高い評価を得ている。一度利用した人が、繰り返し利用するケースが多いようだが、これは長崎県のロイヤルティの向上につながっているのはまちがいない。魅力度をさらに高めるには、軍艦島ブームに浮かれるのではなく、これまでのように長崎の真の魅力を県民が自らの足と言葉で伝えることが効果的であるだろう。

 

◆長崎県の主要項目 (かっこ内は昨年の値。△は上昇した項目)


  • ・認知度     15位(19)△

  • ・魅力度      6位(10)△

  • ・情報接触度   17位(23)

  • ・居住意欲度   16位(18)△

  • ・観光意欲度    6位( 8)△

  • ・産品購入意欲度  5位


◆長崎県の主なイメージ項目

  • ・街並みや歴史建造物  3位( 5)△

  • ・歴史人物       4位(14)△

  • ・祭りやイベント     7位( 8)△

  • ・温泉やレジャー施設   7位(14)△

  • ・土産や地域産品    10位(10)

  • ・商店街や店舗     11位(19)△

  • ・伝統技術       15位(20)△

  • ・宿泊施設       13位(21)△


地域ブランド調査の結果は http://news.tiiki.jp/survey2015 のページに掲載)

執筆・文責:田中章雄 (ブランド総合研究所社長)

(※この記事は、週刊ダイヤモンド2016年1月16日号に掲載したの記事を、筆者が加筆・修正したものです。
週刊ダイヤモンドの「勝手にケンミン創生計画」はコチラをご覧ください)

 

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