新型コロナウイルス感染症は、地域経済に甚大な影響をもたらしている。特に、観光業や飲食業への影響が大きい。緊急事態宣言が解かれたとして、インバウンドや団体旅行などの回復には時間がかかるだろう。そうした事態に、地域がすぐに取組むべき飲食業での具体的な復興策についてまとめる。
飲食業の地域復興案
飲食店も新型コロナウィルス感染症の影響が大きい。休業を余儀なくされたり、アルコール飲料の提供時間が限られたりの制約が大きく、売り上げが大きく減少した飲食店は多いだろう。特に、宴会需要の割合が大きい店舗は、宴会そのものが延期または中止になっているために、影響は計り知れない。
また、夜の飲食による売り上げ比率が高い店や、観光客向けの売り上げに依存していた観光地の店も影響が大きいのではないか。
これから自粛が緩和されたとしても「3密」を避けるような対策をとっていれば、当面は従来の売上までに回復するには、多くの時間を要することになるだろう。
飲食店の多くは零細企業のため、休店することが即座に売り上げ減につながる一方で、家賃や借入金の返済などの出費は変わらない。そして、休店が長引くと、食材などの食品ロスにもつながる。
それゆえに、新型コロナウィルスの感染による影響は非常に大きく、存続危機に面している店も少なくない。
そこで、こうした飲食店の売上を回復させるための方策についてまとめてみる。
(1)健康によい食
スーパーで売れている食品の中には、抗酸化作用など機能性をうたった商品が多い。感染症にかからない、あるいは重病にならないためには、日ごろから機能性などの効果が期待できる食品を食べようという人が増える。
そこで、飲食店も抗酸化作用の大きい食、野菜を中心の食、などをテーマにして、ウイルスに負けない体づくりのための食を打ち出すのは効果的だろう。
都会にいると、ランチのメニューはどうしても高カロリー、高塩分、高糖度(カーボン)になりがち。これが成人病につながりやすい。また、高血圧、糖尿病の人ほど、コロナウィルスに感染した場合に症状が重くなりやすいというデータも出回り、食を健康的にすることに気を付けるきっかけとなった人も多いだろう。
また、自宅にいることで運動不足になり、食事をとりすぎて肥満傾向、カロリーオーバーになったと悩む人も少なくない。こうした機会に、「健康に良い」食事を提供するような流れを作ってはどうか。
同様に、「ベジタリアン・ヴィーガン」や、ローカーボ、低アレルギーなどに考慮した食を提供するような取り組みはどうだろうか。店のメニューすべてをベジタリアンや、アレルギー対応とするのは非常に負担が大きい。しかし、一部のメニューを対応し、それをメニューごとに表記するようにすることは、すぐにでも対応できるのではないか。これを「食のバリアフリー対策」となる。
東京オリンピック・パラリンピックが延期となったことで、それまでにインバウンド対策として、食のバリアフリー対策をとることにつながれば、一石二鳥と言える。
(2)デリバリー、テイクアウト
外出自粛が緩和されても、飲食店の集客が元に戻るには多くの時間がかかるだろう。「飲食店に入って、隣に知らない客がいると怖く感じる」という声が多く聞こえる。
「3密」を避けて、座席の間引きをしたり、テーブル間の距離を開けたりという工夫が必要になっている。
ところが、それは隻数の減少、売り上げ減少につながることになる。しかも、営業時間の短縮という制約もある。
そうした対策として有効なのは、デリバリーやテイクアウトだろう。もともと日本はそば屋などの出前という文化がある。出前の人材やノウハウが名場合は、ウーバーイーツなどのデリバリーサービスを活用する方法もある。あるいは、テイクアウトサービスを始めるという方法もある。
ただし、気を付けたいのは衛生面。これから夏に向かうと、食べ物が腐りやすい環境になる。腐りにくくするのに最も効果的なのは、調理時や配膳時に雑菌をつけないこと。つまり、頻繁にかつ丁寧に手を洗うことや、使い捨ての手袋を活用するなど、徹底的に管理すること。
もちろん、マスクをして、帽子かバンダナなどの利用もいいだろう。
それから重要なのは、デリバリーやテイクアウトは、少し冷めても美味しく食べられるようなメニューにすること。「冷めたら電子レンジで温めなおせばいい」と、客に作業を強要するようではいけない。
ある居酒屋が、デリバリー用に野菜を多くして、冷めても美味しく食べられるような弁当を作って販売したところ、日ごろとは異なる若い女性客が買ってくれるようになったという。それを機に、店内メニューも見直して客層の拡大につなげようと考えているという。
雨降って地固まるではないが、これを機に、メニューや調理方法、衛生管理などを見直す機会につなげてもらいたいものだ。
(3)地産地消
緊急事態は食品工場や、物流にも大きな影響を与えている。
一時的にスーパーやコンビニの食品が不足する事態があったが、アイテムによっては長く商品の欠品や品薄状態が続いているものもある(その一方で、過剰在庫になって経営を圧迫しているものもあるが)。
特に。海外からの輸入品に関しては、食材不足の解消に多くの時間を要する可能性がある。
飲食店は合理化や、人件費の削減などのために、レトルトや冷凍食品などの加工食材の利用率を高める傾向がある。こうしたものに頼りすぎると、今回のような事態や、あるいは近い将来に起こりうる大震災などの有事の時に対応ができなくなってしまう。
多少は原材料費が高くなっても、特に周辺の農家から購入できるようなルートを開発するなど、地域の食材をより活用することに注力してはどうだろうか。
ただし、そのためには、日本の農業の持続的なものにするような取り組みが不可欠で、地域食材を飲食店に供給できるような仕組み(物流も含め)も必要になる。
農家数軒が協同して、複数の飲食店に野菜や果物などを共同配送する仕組みを構築するなど、今一度自治体は本気で考えてみるべきだろう。
いま世界中でSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが叫ばれている。上記の取組は、まさに環境面、地域活性化などの面での大きな取組となるはずである。
多少は高くても、地元産の食材を利用することで、「フードマイレージ」(食品の輸送距離)を短くすることで、CO2の排出量の削減にもなり、なにより農業従事者の所得向上につながる。そして、所得向上は日本の農業で一番の課題である農林漁業者の不足と高齢化の改善にもつながるだろう。
まずは、飲食店と地元の農家との連携を強め、ゆくゆくは飲食店への地域産品の共同配送システムの構築につなげてもらいたいものだ。
(文責:田中章雄・ブランド総合研究所社長)
当コラムについて
※このコラムは5回連続での掲載を予定しています
第1回:コロナ復興、地域の具体的な活性化案
第2回:観光活性化、3つのテーマ
第3回:飲食業の復興に必要なのは (今回)
第4回:イベント・スポーツ (近日公開予定)
第5回:商品、小売り、商店街
(一部変更になることがあります)
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