鳥取県は7月1付けで、ソフトバンクが開発した人型ロボット「Pepper(ペッパー)」(以下ペッパー)を同県の宣伝部長に任命。ペッパーは7/1・2の二日間にわたり東京都港区にあるアンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」の店頭で鳥取県の特産品であるスイカのPR業務を行い、7/1の朝には平井伸治鳥取県知事よりペッパーに辞令交付式を実施。当日会場には18社ものメディアが取材に訪れ、その様子は全国、そして海外にも報道された。
【鳥取県のPRに勤しむペッパー】
兎角行政組織で上記のような催しを行う場合<数ヶ月前から関係各所と綿密な調整が必要なのではないか>と思われる方も多いのではないだろうか。そこで今回の経緯を鳥取県東京本部の担当者に伺った。
■企画立案のために常にアンテナを張る担当者
企画のきっかけは担当者が6/18に触れた「ロボット人材派遣サービス」に関するニュースだった。その際は「もし派遣サービス開始時の7/1に何か出来れば、合わせて鳥取県をPRできるかもしれない」という漠然とした思いで仮予約サイトに登録。応募者多数の場合は抽選とのことだったが、翌週6/23の夜に当選の報が届く。そこから今回の企画調整が始まった。
■地域・地域の産品のPRに結び付ける
実は鳥取県は、スイカの出荷量が全国4位と有数の産地である(平成25年度農林水産省野菜生産出荷統計より)。
しかし、消費者のイメージとして「鳥取=スイカ」は必ずしも結びついていない。弊社が実施している「地域ブランド調査2014」では、産品購入意欲度(食品)という項目がある。例えば「鳥取県と聞いて購入したいと思う産品」を自由記述で回答してもらい、その回答数をスコア化するものだ。鳥取県の結果をみると、回答数の半数は「(二十世紀)梨」、25%は「(松葉)蟹」で占められており、今回PRを行った「スイカ」は回答数の3%とイメージ想起は高くない。
上記のような要因に加え鳥取県産のスイカがこれから旬を迎えることから、ペッパーを通じて県産スイカのPRを行うという企画の格子が固められた。
■急なイベントにも対応できる関係各所との関係性
今回の企画実施のため、急きょ東京本部担当者が本庁、アンテナショップ、またソフトバンクグループと調整。さらに、平井県知事もたまたま当日都内で他の公務があったことから出席を急きょ調整。今回交付式に参加した平井県知事は多忙の合間を縫って2週間に1度は東京を訪れ、常々職員と意思疎通の場を設けていたことからスムーズな調整に繋がった。そこから各メディアにリリースを配信。企画から2週間、無事当日を迎えることとなった。
今回のケースでは、企画から実施までが2週間と準備期間が非常に短い中で「どうすれば地域をPRできるか」常にアンテナを張っていることと、そのアイディアを短時間で実現するための関係性の構築の重要性を示唆している事例といえるではないだろうか。
(文責:安田 儀 ブランド総合研究所 コンサルタント)