ラーメンは和食と考える日本人は少ないだろう。カレーライスやギョウザも同様だ。その一方で、これらのメニューが常に、外国人が日本に来て食べたい「日本の食」(Japanese Food)の上位にランクインすることも事実である。この認識のギャップは、やがて外国人のお客様からのクレームに繋がるかもしれない。
タキイ種苗株式会社(所在地:京都市下京区、代表取締役社長:瀧井傳一)は今年5月、日本在住の112人の外国人に向けて『日本の食文化に関する意識調査』の結果を発表した。この調査の中で「自分の国の人におすすめ出来る、美味しいと感じる日本食」という項目があるのだが、寿司や天ぷらを押しのけてラーメンが1位となったことが話題になっている。「ラーメンは和食か」という議論につながるからだ。
実はラーメンだけではない。今回の調査では、5位に「カレーライス」、6位に「ギョウザ」がランクインしており、上位10品目のうち3つがいわば「外来種」である。この質問が「おすすめ出来る、美味しいと感じる日本食」であることから、外国人はこれらのメニューをまぎれもなく「日本食」と認識していることがわかる。(筆者も海外で現地の方から「日本に行ったらJapanese curryを食べたい」と言われたことがある)
(タキイ種苗『日本の食文化に関する意識調査』を元に独自にグラフ作成)
日本人の感覚からすると、ギャップを感じる人も多いだろう。実際に「ラーメンやカレーライスなどは和食か」は、和食がユネスコ無形文化遺産に登録される前後から、しばしばホットな議論ないし論争のテーマとなってきた。
ちなみに、辻調理師専門学校などを運営する辻調が2013年に」全国の20代~60代男女に対して行ったインターネット調査によると、「以下のメニューを『和食』だと思いますか」の設問に対し、ラーメンやカレーライスを「和食ではない」と答えた人は7割以上、焼き餃子については8割以上だった。
なお、ユネスコで登録された「和食」は、「日本の食文化」としての和食であり、一汁三菜、おせち料理などの伝統食などがこれに含まれる。ただし必ずしも特定のメニューを指したり除外しているわけではない。つまり「和食」がどこまでのメニューを含むかどうかについて何かしらの判断基準があるわけではない(国もあえて基準を出さず、むしろ日本の食を広く発信していこうというスタンスである)。
伝統的な食文化のみを和食とするのか、外来種も含めて日本で育まれたメニューを広く和食の概念に入れるのか。おそらく言葉の問題であろう。私は、次のいずれかに言葉を整理するのがよいと考える。
もちろん、どの言葉でくくろうと、いずれも日本が自分たち自身及び世界に対して誇るべき食文化であることに変わりない。しかし言葉の整理は急務なのだ。
なぜなら、もし何らかの言葉の統一をもたせなければ、食の提供を行うレストランやメーカー側とユーザー側(外国人のお客様)とで行き違いが起こり、ユー ザー側からのクレームや満足度低下につながる恐れがある。「広く売りたい」は結構であるが、ユーザーの期待を裏切っては元も子もない。これだけ世界で和食ブームが拡大し、「まがいもの」も増える中、そろそろ対策を急ぐべきときに来ていると考える。
(執筆:金築俊輔 ブランド総合研究所 シニアコンサルタント)