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食・農・地域と出会う~おおむら夢ファームシュシュの取り組み~

食・農・地域と出会う~おおむら夢ファームシュシュの取り組み~

長長崎空港から車で約15分。山肌に開かれた果実と野菜の畑の中にある木造のログハウスのような建物に、車で乗り付けた人々が次々と入っていく。年間50万人もの買い物客が訪れる大人気の農産品直売所、おおむら夢ファームシュシュだ。


長崎空港から車で約15分。山肌に開かれた果実と野菜の畑の中にある木造のログハウスのような建物に、車で乗り付けた人々が次々と入っていく。年間50万人もの買い物客が訪れる大人気の農産品直売所、おおむら夢ファームシュシュだ。



木造のログハウスに入って行くと、正面にガラス張りの部屋がある。中では、子供たちを始め、大人も一緒になって楽しそうに料理をしている。そこでは、食育体験教室が開催されているのだ。年間約9,300人の食育体験教室参加者を、食育体験専門の正職員スタッフ2名がおもてなししている。




シュシュの施設内のバイキング形式のレストランで昼食を取り、食育体験で楽しい時間を過ごし、直売所や洋菓子工房・パン工房でお買い物をすると、いつの間にか夕方になっている。そこへ、タイミングよく迎えに来てくださるのが、グリーンツーリズムの民泊先の方だ。

シュシュは、2つの出会いの場を提供してくれる。食育体験などを通じた食・農との出会い、そして、グリーンツーリズムを通じた地域との出会いである。これらの場づくりは、一体どのように行われているのだろうか?

 

◯おおむら夢ファームシュシュの概要

シュシュが立地している大村市福重地域周辺では、もともと果物狩り体験などを中心とした約40年の観光農園の歴史がある。平成10年、果物狩りのシーズンである9~10月以外の集客が課題となり、地元農家が集まり共同出資により有限会社「かりんとう」を設立した。その後、平成12年に農業交流拠点施設「おおむら夢ファームシュシュ」をオープン、平成15年に現在の有限会社「シュシュ」へと名称が変更された。

シュシュの施設内には、直売所「新鮮組」・洋菓子工房・アイス工房・パン工房・体験教室・レストランなどがある。さらに、農業教育ファーム「農業塾」や、果物狩り体験ができるぶどう園やいちご園まで設置されている。地域の食と農を体験する要素がギュッと詰まった場所だ。

[caption id="attachment_2838" align="aligncenter" width="300" caption="おおむら夢ファームシュシュのログハウス。中には食育体験教室やパン工房がある。"][/caption]

 

その中でも体験教室は、施設内で最も目立つ、いわば「一等地」に設けられている。しかも、教室がガラス張りになっており、来店したお客様が食育体験を直接見られるようになっている。シュシュでは、食育体験事業を会社の理念の柱として、あるいは他店舗との差別化を目的として行っている。体験教室がある場所に、例えばカフェを設置すれば、経営上有利なことが考えられるが、シュシュではあえてそこに体験教室を設置しているのだ。体験への思い入れの強さが如実に現れている。

そんな食育体験は、平成17年、洋菓子工房と農産物直売所(新鮮組)増築オープンと合わせてさらなる充実が図られた。設立当初はウィンナー作り体験とイチゴ狩り体験といったメニューのみだったところが、来店するお客様の要望やスタッフの発案を通じて、体験メニューもお客様の数も増加。現在では、体験参加者数が、年間約9,300人になるまでになっている。

さらに、グリーンツーリズム協議会がシュシュ内部に設置されており、地域と連携してグリーンツーリズムを行っている。民泊農家は9件、年間400名ほどのお客様を受け入れている。数字上からは目えないが、農家や地域住民の仕事を最優先させ、受け入れ農家・民家の「受け入れ疲れ」を発生させずに継続的に取り組みが進められるよう、細心の注意を払い工夫をしながら実施している。

 

◯シュシュの食育体験
シュシュでは、様々な食育の体験メニューがある。ウィンナー作り、ハンバーガー作り、いちご大福づくりや、さらにはフラワーアレンジメントまで出来るのだ。中でも人気なのが、「レインボー教室」と「ウィンナー作り教室」だという。

レインボー教室は、ウィンナー作り・パン作り・シュークリーム作り・ホットドック作りの4つの体験のいいとこ取りをした豪華な体験メニューだ。そしてウィンナー作り教室は、大村産の豚肉にこだわった、手づくりウィンナーを豚肉のミンチから作り始める体験メニューだ。ここからすると、ウィンナー作りはシュシュの人気体験メニューに欠かせない要素なのかもしれない。ウィンナーメーカーからウィンナーを捻じり出す体験は、子供たちに限らず、大人にも新鮮で驚きに満ちた、まさに食育と呼ぶにふさわしい経験だろう。子供も大人も関係なく、皆で楽しめるのがシュシュの食育体験なのだ。

体験教室に参加した子供たちは、「優しく教えてくれてありがとう」「おいしかったよ」といった感想の手紙・寄せ書きをシュシュへ送ってくれたり、お客様がご自身のFacebookに掲載してくれたりしてくれているそうだ。いかにお客様の心に残る食育体験であるかが伝わってくる。

[caption id="attachment_2839" align="aligncenter" width="300" caption="食育体験の様子。大人も子供も楽しめる。"][/caption]

 

 

◯中途半端な気持ちでは食育体験は続かない
このような食育体験教室に、年間約9,300人のお客様がやってくる。シュシュではそれを、2名の女性正職員スタッフが迎えている。全国的に見て、食育体験を継続的に実施できている施設自体が稀だというのに、ボランティアではなく正社員のスタッフが2名も、しかも体験専門のスタッフとして活躍しているのだ。

ところで、全国約3,000の直売所・道の駅等を対象とした「食・農体験アンケート調査(ブランド総合研究所調べ)」によると、体験プログラムを実施するにあたっての課題や悩みとして、「スタッフが足りない」が48.5%で1位となった。また、体験プログラムの拡大・充実のために力を入れたいこととしては、「スタッフの育成」が40.9%で1位となった。つまり、アンケート結果によると、全国的に体験プログラムを提供するスタッフの育成・充実が課題となっていることがわかる。そんな中、なぜ、シュシュでは正社員が体験スタッフを担っているのだろうか?

ともすれば、体験プログラムを提供するスタッフは、ボランティア的になることが多いのではなかろうか。しかし、継続的に体験を提供していくとなると、ボランティアのままでは難しい。シュシュの代表取締役山口社長は「スタッフ不足は飲食業界では当たり前。その中で継続的に食育体験を提供していくためには、正社員のリーダーが責任をもって体験を実施していく必要がある」とおっしゃっている。

シュシュでは、食育専門スタッフの育成も自前で行っている。全国の道の駅・直売所、地域づくりの先進地へ視察に出かけ勉強し、さらに農業から牧場での作業までをスタッフ自身が体験を通じて学んでいるのだ。採用後すぐに海外へ商談を兼ねて視察に出かけたスタッフもいるとのこと。これだけ、真摯で真剣な思いがシュシュの食育体験には込められているのだ。

だからこそ、スタッフは自らの体験を通じて学んだことを体験教室で参加者に教えたり、伝えたりすることができる。「食育体験は大事なこと。だから中途半端にやりたくない。しかし、簡単にできるものではない。」山口社長の言葉だ。

 

◯大村市でのグリーンツーリズムの取り組み
もう一つ、シュシュの理念が端的に現れている取り組みが、大村市におけるグリーングーリズムだ。 大村市では、およそ5年前からグリーンツーリズム協議会がシュシュ内部に設置されている。市内の受け入れ農家・民家は9軒、年間で約400名のお客様を迎えている。特徴的なのが、受け入れ農家・民家の本業を再優先するという考えを一貫し、事業の継続性を図っているところだ。

例えば、お客様を迎える時間である。多くの地域では、15~16時頃には受け入れ農家さんがお客様を迎えてくれる中、大村市では17~18時に迎えてくれる。なぜ大村市ではチェックインの時間が遅いのだろうか?

受け入れ農家の多くが本業として農業をされている。そのため、農作業で土がついていたり、汗だくになっていたりと、そのままではお客様を迎える訳にはいかなくなってしまう。そこで事前に身支度をすることになる。そうすると、15時に迎えようとすれば、14時には仕事を切り上げなくてはならない。もし、数トンスケールで出荷をしている農家さんであれば、本来農作業に当てることができた時間を農家民泊の準備にあててしまうことで、出荷機会を逃し、数十万円の機会費用が発生してしまうおそれがある。「農業を犠牲にしたグリーンツーリズムは本末転倒ではないだろうか。」山口社長の言葉だ。それ故に、17~18時頃に迎えてくれるというわけだ。それまでの時間、お客様にはシュシュで食育体験や買い物などを楽しんでもらうことができる。

このように、受け入れ民家の「受け入れ疲れ」を生じさせないよう、細心の注意を払って、持続的な取り組みになるよう地域全体で支え合う工夫をしているのだ。

 

◯夢を届ける直売所
山口社長や体験専門スタッフを始めとした情熱のある人がいて、はじめて食育体験を自主的に継続することができる。そして、地域で支え合う仕組みを作ることで、グリーンツーリズムを無理なく継続することができる。その結果、食や農との出会いの場、地域との出会いの場が作り上げられているのだ。

今後も、地域との新しい出会いの場を消費者に提案してくれる、そんな「夢を届ける直売所」であり続けてほしいと思う。

※本記事は、農林水産省補助事業 「消費者ニーズ対応型食育活動モデル事業」の一環として、おおむら夢ファームシュシュへ平成27年8月19日に行った取材を基にして執筆しています。取材にご協力くださった山口社長はじめシュシュの皆様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。

 

この記事のライター
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