大阪府の魅力度の順位は前年より順位をひとつ下げて全国9位だった。
大阪府に対する評価は、回答者のうち関東居住者と近畿居住者で大きく異なっている。例えば、大阪府を「よく知っている」と答えた人は近畿居住者においては40%いたが、関東居住者ではわずか5%にすぎなかった。逆に31%が「名前だけは知っている」と答えている。順位で比較すると、近畿居住者による認知度は1位だが、関東居住者による認知度は7位と大きく異なっている。
こうした「西高東低」の評価は魅力度や居住意欲度も同様で、関東居住者からの評価は相対的に低い。つまり、大阪府の魅力度を高めるためには、関東居住者に対してPRをすることが不可欠のようだ。
では、具体的に大阪府のどのような魅力を伝えるか。大阪には日本一の超高速ビルであるあべのハルカスや、大阪駅周辺の再開発などで、商業地としての魅力は高まっている。また、「くいだおれの町」ともいわれるように食のイメージもとても高い。そして、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の人気も急上昇中だ。
さらに、15年は大坂冬の陣、夏の陣から400年の節目の年となることから、大阪城を中心に「大坂の陣400年天下一祭」が開催されている。「水都大阪」と称して、大阪の水辺を盛り上げるイベント等も展開中だ。実際、調査でも魅力的な場所として、具体的にUSJや大阪城を挙げた人も多い。
このように、いまは大阪府の魅力は盛りだくさんだ。その結果、大阪府の主なイメージ項目の全国順位はどれも高い。例えば「魅力的な商店街や店舗がある」は3位、「食事がおいしい」も3位、「歴史人物などにゆかりがある」も3位と、商店街や店舗、食事に関するイメージ項目がいずれも高いほか、スポーツ、歴史、交通などに関するイメージ項目も全国の上位順位にある。
「そもそも3位というのは気に食わん。本来は1位であるはず」との声も聞こえてくるが、これは前述のように、まだ東日本からの評価が十分に高まっていないことが原因だ。
とにもかくにも、大阪府には魅力的な要素が豊富にあるということになる。それなのに魅力度の全国順位は9位でしかない。このミスマッチはなぜ起こっているのだろうか?
◆地元からの魅力度が低下
魅力度の経年変化をみると、2011年より明らかに低下傾向にある。2009年から2011年までは全国7位だった順位も、今年は9位と2つも順位を落としている。また、点数(魅力度スコア)は2009年が32.1点だったが、ほぼ一直線に点数が下がりつづけて、今年は25.0点になってしまった。
この下がり方に大きな特徴がある。つまり回答者のうち近畿地方に居住している人による評価が大きく低下しているということだ。11年には近畿地方居住者が大阪府を「とても魅力的」と答えた人は20%いたが、今年は15%に減っている。さらに「やや魅力的」と答えた人は11年には52%いたが、今年は32%へと急減している。
つまり、「西高東低」だった近畿地方からの評価が下がってしまっているということだ。
逆に東北・北海道居住者や、中部居住者からの評価は4年間で上昇しているだけに、地元である近畿居住者からの評価が下がっているのは異常事態ともいえる。
また、大阪府に居住する人が大阪府に対して「とても愛着がある」と答えた人の割合は、2011年には半数を超える50.4%だったのが、15年には41.7%と9ポイントも低下している。(注:愛着度の順位は11位と前年の12位より1つ上昇しているが、愛着度の点数は低下している)
下がり始めるターニングポイントの2011年といえば、大阪維新の会が大阪都構想を掲げ、大阪府知事と大阪市長のダブル選挙が行われた年だ。いみじくも、この年より大阪府の魅力度は年々低下していることになる。
二重行政を改善し、財政を健全化することは重要な課題ではある。その一方で、地元からの愛着度が薄れ、魅力と感じにくくなっている。政治面での抗争が、大阪全体のイメージを低下させ、愛着度の低下に結び付くとすれば元も子もない。将来に向けて大阪府の魅力をいかに高めていくかという視点に立った具体的な施策や方法論を展開することが、もっと必要であるという調査結果に他ならない。
幸い、知事選と市長選のダブル選挙も無事に終わった。その結果うんぬんではなく、ここからは大阪の魅力を全国の消費者にちゃんと伝えることに専念してもらいたいと願う。
◆大阪府の主要項目 (かっこ内は昨年の順位。△は上昇した項目)
- 認知度 4位 (4位)
- 魅力度 9位 (8位)
- 情報接触度 3位 (3位)
- 居住意欲度 8位 (8位)
- 観光意欲度 9位 (9位)
- 商品購入意欲度 6位
- 愛着度 11位 (12位)△
◆大阪府の主要なイメージ
- スポーツの参加・観戦が楽しめる 2位 (4位)△
- 歴史人物などにゆかりがある 3位 (5位)△
- 魅力的な商店街や店舗がある 3位 (2位)
- 食事がおいしい 3位 (3位)
- 交通の便がいい 2位 (3位)△
- 地元を代表する産業や企業がある 2位 (3位)△
地域ブランド調査の結果は http://news.tiiki.jp/survey2015 のページに掲載)
執筆・文責:田中章雄 (ブランド総合研究所社長)
(※この記事は、週刊ダイヤモンド2015年11月14日号に掲載したの記事を、筆者が加筆・修正したものです週刊ダイヤモンドの「勝手にケンミン創生計画」はコチラをご覧ください)