「マッチャ、マッチャ!」 いま海外では抹茶味が大変なブームになっている。
キットカットでは抹茶味が一番人気。自国にはないからと、抹茶アイスクリームを食べに日本を訪れる外国人観光客もいるという。
海外での抹茶味ブームの立役者が、島根県の小さなお茶屋さんという説がある。さあ、あなたは信じるだろうか?
島根県松江市といえば、茶消費量が全国2位、世帯あたり和菓子消費量が全国1位であり、知る人ぞ知る、全国3大茶処の一つである。面白いのは普通の家庭でポットからお湯をそのまま注いで抹茶を点てる。表千家とか裏千家とか堅苦しい(失礼!)のはない。それぐらい庶民レベルに抹茶文化が浸透している。
そんな松江市で明治17年から営業を続ける老舗茶商が「中村茶舗」である。もとは宇治の茶問屋の分家だったらしい。国内の茶市場が縮小する中で、よそ様の縄張りを荒らす訳にはいかないと海外進出を決意。海外視察を繰り返し、ついにタイへの進出を果たす。東京・大阪を飛び越えて、松江からいきなりタイへの進出である。
◆タイで日本茶ショップ「Chaho」を大々的に展開
タイで気鋭の事業家と出会ったことが転機となり、2007年、カフェ併設の日本茶ショップ「Chaho」をオープン。バンコクの大きなショッピングモール内で、ハーゲンダッツと並ぶようにして「Chaho」が営業を開始した。「夢のような話です」と中村社長はいう。
女性向けで、健康的で、明るい店内。抹茶の「侘び寂び」とは相当イメージが異なる。しかし、そこは堅苦しくない松江の抹茶文化。おしゃれ大好きなタイ人に受けるように思い切りローカライズしたのだ。しかしもちろん出すのは、原料から加工まで全てにこだわった茶商自慢のお茶である。注文すると、タイ人の店員さんがテーブルにやってきて、目の前でお茶を点ててくれる。一種のライブ・パフォーマンスだ。お客さんは甘い抹茶オレから足を踏み入れ、次第に抹茶の奥深い世界にハマり込むという仕掛けだ。
◆タイ王室にお茶を提供し、王室御用達のブランドへ
ところで、タイではタイ国王の愛され方が絶大である。どのくらい絶大かというと、庶民が車のバックミラーに王室の写真をぶら下げるのは当たり前の風景。そんな王室の一人、タイ皇太子妃にお茶を差し上げたことから、一気に「Chaho」はブレークした。タイ王室御用達の店として、広く国民から愛されるお店に成長を遂げたのだ。
◆「うんちく」と「体験」という付加価値
中村社長は、タイに行くたびに現地で抹茶教室を開く。とにかく茶に関する「うんちく」を喋りまくる。松江市でローカルFMのパーソナリティをしているほどだから、もう止まらない。この「うんちく」にお客さんは感動し、今度は知り合いに話したくなるのだという。
「chaho」以前は、タイで日本茶はただ店頭に並べて売られるだけだった。中村茶舗は日本の茶文化の「うんちく」や「体験教室」、抹茶を点てる「おもてなしサービス」というソフト面での付加価値を提供したのである。
◆抹茶味ブームの仕掛け人…?
最後に、海外の抹茶味ブームの火付け役は中村茶舗だったのか?という噂の真偽だが、あるバイヤーが個人的にいつから(どこから)抹茶味ブームが生じたのかを調べて行ったところ、行き当たったのがバンコクの「Chaho」だったという。真偽を確かめるのは別の機会にしておくとして、中村茶舗がタイで抹茶を広めたのは紛れも無い真実なのである。
関連サイト: 有限会社中村茶舗
(文責:金築俊輔 ブランド総合研究所 シニアコンサルタント/地域活性化アドバイザー)
※この記事は、ブランド総合研究所が農林水産省の補助を受けて制作した『食のバリューチェーン構築のてびき ~6次産業の高付加価値化に向けて~』の記事を再構成したものです。

海外で抹茶味が大ブームの理由とは? ~中村茶舗のタイでの成功(島根県松江市)~
2015年04月16日更新
「マッチャ、マッチャ!」 いま海外では抹茶味が大変なブームになっている。キットカットでは抹茶味が一番人気。自国にはないからと、抹茶アイスクリームを食べに日本を訪れる外国人観光客もいるという。海外での抹茶味ブームの立役者が、島根県の小さなお茶屋さんという説がある。さあ、あなたは信じるだろうか?
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