地域ブランド調査2015において、宮崎県を「魅力的」と答えた人は33.3%と前年の25.2%から約8ポイントも増えた。この伸び幅は47都道府県中で福井県に次いで2番目という高さだ。なお、魅力度ランキングでの順位は13位となり、前年(2014年)の25位より急上昇した。
魅力度急上昇の理由のひとつとして考えられるのが「オリ姫効果」だ。プロ野球のオリックス・バファローズを応援する女性ファンのことを「Bsオリ姫」と呼ぶが、14年の七夕の日に球団が女性ファンを対象にイベントを開催。そこに集まったファンを球団が「オリ姫」という愛称で呼んだことから始まった。
かつて、宮崎はプロ野球球団の春キャンプ地としてにぎわっていたが、高度成長時代に海外や沖縄にキャンプ地を変更する球団が相次ぎ、いつの間にか2軍キャンプだけになってしまっていた。
ところが今年の2月、オリックス球団がキャンプ地をそれまでの宮古島から宮崎に変更したことで、久しぶりの1軍キャンプが宮崎で開かれたのだ。 1軍のキャンプ地となった清武総合運動公園のSOKKENスタジアムは宮崎市中心部から車で約20分ほどにある。ここに1軍のスター選手とともに多くのメディアが集まったのだが、おしゃれないでたちの「オリ姫」も集結した。
◆おしゃれな「オリ姫」が大集合
なにせ、ファッションの聖地、神戸を本拠地とするオリックス球団の女性ファンだけに、レプリカのユニフォーム姿より、ファッショナブルな姿が目に付いたという。 この姿がマスコミに多く報道されたことで、宮崎のイメージアップにつながったというわけだ。今年の調査結果では、特に20代の若い世代からの支持が高まったことで、宮崎県の魅力度が上昇したというわけだが、宮崎県とプロ野球とのつながりはオリ姫ばかりではない。
南国情緒豊かな気候から、今春のプロ野球キャンプでは巨人、広島、東京ヤクルト、ソフトバンク、西武の5球団も二軍選手による春季キャンプが開催された。毎年、11月に秋の教育リーグ「フェニックスリーグ」が開かれているが、11年からは韓国から3チーム、独立リーグから1チームも参加し、計16チームで開催されている。
また、サッカーのキャンプ地としても活用されているほか、東京オリンピックに向けてゴルフやトライアスロンなどでも強化拠点となることを目指している。宮崎県ではキャンプ地巡りのツアーや、ゴルフ宿泊ツアーなどを企画販売しているほか、韓国や中国、台湾などからの集客(インバウンド)にも取り組んでいる。
このように宮崎県ではスポーツ振興に積極的だが、重要なのはこの人気を宮崎の真の活性化にいかにつなげるかだ。特にオリックスは在阪の球団であるだけに、オリ姫効果は近畿や九州など西日本に限定され、東京など関東地方からの評価上昇にはつながりにくい。
しかし、在京チームは2軍選手によるキャンプも開かれている。2軍は実力は1軍ほどではないが、将来性がある若い選手が中心だ。こうした選手目当てに若い女性ファンも多く集まるはず。このファンに宮崎の魅力を伝え、宮崎のファンになってもらえるように働きかければ、地域活性化に大きく貢献するのではないか。
今年、観光意欲度は14位へと前年17位より上昇したが、ハネムーンのメッカと言われて日本中から憧れられていた昭和時代には程遠い。今回の上昇が話題性だけではなく、宮崎県自体の魅力向上という実態につながるような戦略をいかに打ち出せるかが重要だ。
◆いもがらぼくとからの脱皮
その解決の手段として考えられるのは、地域資源の付加価値化だ。宮崎県は宮崎牛やマンゴーなど地元産の食材に関する評価は全国12位と高いが、その半面、食事に関する評価は30位と低い。つまり、豊富で魅力的な食材はありながら、それを食事メニューや商品化、食・農体験化に結び付ける「食のバリューチェーン化」が遅れているということだ。
宮崎県人の気質を表す「いもがらぼくと」「日向かぼちゃ」という言葉がある。芋がらで作った木刀のように、見た目は立派だが芯のないお人よしの男性と、黒く小振りだが味はしっかりしている女性を表すもので、民謡の歌詞になっている。
南国情緒豊かでのんびりとした気質に甘んじるのではなく、地方創生に向けて宮崎の魅力を新たに磨き直すことが、魅力度をさらに上昇させ、真の地域活性化につなげるためには不可欠だろう。
◆宮崎県の主な指標 (カッコ内は2014年の結果) △は上昇したもの
- 認知度 29位 (35位) △
- 魅力度 13位 (25位) △
- 情報接触度 32位 (28位)
- 観光意欲度 14位 (17位) △
- 居住意欲度 26位 (26位)
- 産品購入意欲度 9位 (-)
- 愛着度 8位 (13位) △
地域ブランド調査の結果は http://news.tiiki.jp/survey2015 のページに掲載)
執筆・文責:田中章雄 (ブランド総合研究所社長)
(※この記事は、週刊ダイヤモンド2015年10月31日号に掲載した記事を、筆者が加筆・修正したものです。
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