風林火山に象徴される、騎馬軍団を率いた戦法と外交戦術に長けた、戦国時代最強の武将・武田信玄。山梨県の歴史や風土にはいまだに信玄の影響が強く残る。隣国・信濃(長野県)の川中島の戦いで宿敵・上杉謙信と幾度となく争ったことが有名であるが、産業の振興や治水事業にも力を注いだ。
富士山と八ヶ岳、南アルプス、奥秩父山脈という2000mを超える山々に囲まれ、耕作可能な平地が少ないだけに、斜面等を活かしてブドウや桃、さくらんぼなどの果樹栽培が盛んに行われ、フルーツ王国とも言われている。
ワイン醸造も国内で最も盛んで、特に甲州産ブドウで造った甲州ワインは、世界的にも評価が高まっている。地域ブランド調査の結果では「食材が豊富」のイメージは全国19位ではあるが、ブドウなどの果物やワインを想起する人は多い。
◆客単価を高める工夫を
富士山の世界文化遺産登録が追い風となり、いま富士山観光の需要が急激に高まってきている。地域ブランド調査の結果では、関東居住者のうち過去1年間に山梨県を訪問した経験のある人は30%を超えており、これは静岡県、千葉県についで3位だ。
ところが、観光客増加がもたらす経済効果に関しては、十分に高いとは言えない。関東からの観光客は日帰り客が大半で、宿泊客が少ないからだ。また、御殿場アウトレット(静岡県)に購買需要を奪われてしまっているとなげく商業関係者も少なくない。
土産品では桔梗屋信玄餅はあるが果物を生かした土産品があまりない。極めつけは干しブドウで、チリ産が大半で、県内産はほとんどない。急増している観光客向けに商品開発やメニュー開発などを地域全体で取り組み、波及効果を高める必要があるだろう。
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◆山梨県の主な指標
- 認知度 33位
- 魅力度 30位
- 情報接触度 25位
- 居住意欲度 33位
- 観光意欲度 24位
- 観光訪問率 11位
◆山梨県の主なイメージ
- 自然が豊か 13位
- 食材が豊富 19位
- 環境にやさしい 8位
- 地場産業が盛ん 5位
- 農林水産業が盛ん 11位
◆提言 果物を生かした開発と、二次交通の整備を
※この記事は週刊ダイヤモンド 9月5日号に掲載されたものです。
週刊ダイヤモンド「勝手にケンミン創生計画」では、毎週、1つの都道府県をピックアップして、
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執筆・文責: 田中章雄 (ブランド総合研究所代表取締役社長)