冬の下呂温泉で花火大会が毎週土曜日に開催される。凍るような冬空に大輪の花火が打ち上げられ、これを目当てに集まった多くの宿泊客が大きな歓声をあげる。下呂温泉の冬の魅力を高めようと2000年から始まったこの企画、いまでは貴重な集客イベントに定着し、イメージアップと集客につながっている。
冬の下呂温泉では、12月に「下呂温泉花火ミュージカル」、1月から3月までは「花火の歳時記」と銘打った花火が、約4ヶ月間、毎週土曜日に打ち上げられる。
下呂温泉は山間部にあり、寒さで冬の期間は集客が鈍ってしまうという課題を常に抱えていた。そこで、約10年前、冬の集客イベントを探していた時に、神戸で行われた音楽に合わせて花火を打ち上げる「花火ミュージカル」に注目した。
花火大会は全国で行われているが、「花火ミュージカル」、つまり音楽に合わせて花火がリズミカルに打ち上がる花火のライブショーは全国でも珍しい。それが冬の夜空に優雅に繰り広げられるのは圧巻だ。

■集客と魅力アップに大きな成果に
そこで、これを下呂温泉の冬のイベントして打ち出すことにした。開催初年から冬の花火大会のメリットは大きかった。
1つは話題性と集客。「冬の花火」「花火ミュージカル」という通常の花火大会にはないテーマをもつこの大会は、それだけでも多くのメディアに取り上げられ、観光客からの問い合わせも相次いだ。もちろん、冬の温泉ツアーのテーマとしてはとても魅力的で、類似のイベントも少ない。旅行代理店がこぞってツアーを打ち出したのは言うまでもなく、当初の狙いであった冬の集客イベントとして大きな効果をもたらした。
2つ目は時間対効果。下呂温泉の冬は寒い。たとえ花火であったとしても、長い時間、屋外で見続けることはお客にとっては苦痛でもある。そこで、クリスマスを除き、冬の花火の打ち上げ時間は10分~15分としている。この短い時間の間に切れ間なく1000発以上を打ち上げることで、「きれい」「豪華」との声が多く上がる。
短い時間だからこそ、1回だけのイベントで終わるのではなく、毎週打ち上げを続けることが可能になった。つまり、1万発の花火を一度に打ち上げるのではなく、1000発を10週連続で打ち上げるというわけだ(実際にはこれより花火の数は多い)。
また、ホテルや旅館の収容力(部屋数)には限界があるため、一度だけの大きなイベントより、毎週繰り返して行われるイベントの方が集客効果が多く、ツアーとしても計画しやすい。
3つ目は、宿泊効果。寒空の冬に花火を見れば、たとえ10分といえども身体は芯から冷え切ってしまう。だからこそ、観客は花火のあとは温泉にゆっくりと入り、暖かい部屋で休もうという気持ちになる。あるいは花火の前に温泉で芯まで温まったうえであれば、寒空の10分間も凍えずに楽しく見ることができる。旅館によっては、露天風呂に浸かりながら花火を見るという醍醐味も味わえる。温泉と旅館と花火。実はとても相性がいいのだ。
4つ目は、花火職人に対する効果。冬は職人にとって需要が少ないオフシーズン。それだけに、日程的にも費用的にも無理が利きやすい。さらに、冬の時期には翌夏向けの新作作りに取り組んでいる時期でもあり、冬の花火は新作のお披露目の場としてちょうどいい。その結果、下呂温泉の冬の花火では打ち上げる花火の約3割を新作が占めている。花火職人はこの大会に向けて新作を開発し、職人のモチベーションの向上もつながっているという。

■毎週テーマを変える/花火の歳時記
こうした多くの成果につながり、大成功している下呂温泉の冬の花火。「花火の歳時記」と銘打った1月から3月までは、毎月コンセプトを変えて花火を打ち上げている。1月は「始まりの章」で、新春や成人式を祝う花火を打ち上げる。2月は「願いの章」で、節分やバレンタイン、合格祈願の花火。3月は「旅立ちの章」で、桃の節句やホワイトデー、旅立ちを応援する花火だ。
さらに、このコンセプトに応じて、毎週異なったテーマを設定している。例えば、1月7日は「新春花火」で、新年を迎え打上花火で四季を表現する。1月14日は「成人花火」で成人を祝った20段の打上花火を実施し、大人の雰囲気の花火を表現する。1月21日は「春よ来い来い・寒明け花火」で、大寒も終わり温かみのある色調の花火を演出する。そして1月28日は「花餅花火」で、飛騨地方の各々の家庭に飾られる紅白の花餅を表現する。
このように毎週異なったテーマの花火とすることで、何度見ても新しい発見と楽しみを味わうことができ、多くのリピーターを生み出している。
■グルメと街の演出/若者のイメージアップに
そもそも下呂温泉は、江戸時代の儒学者・林羅山が有馬温泉、草津温泉とともに、日本三名湯に数えたことから、「日本三名泉」と称されている名泉。1000年ほど前に下呂市街を流れる益田川の河原に湧出しているところを発見された。その河原に下呂温泉のシンボルとも呼べる噴泉池という露天の共同浴場がある。脱衣所・風呂を仕切る壁もなく、混浴で入浴は無料。
ただ、こうした下呂温泉も、何もしなければ宿泊者や観光客の高齢化が進み、集客力や魅力は次第に低下する。イメージの低下を引き起こし、集客力が伸び悩んでしまう。
そこで年間の宿泊客100万人を目指し、特に冬場の集客アップと若い世代からの評判と顧客満足度を高めるために、様々な取り組みを実施している。
冬の花火大会はその流れの一環だが、下呂の「G」を冠したGグルメ、Gスイーツなど地元食材を使った季節に応じたメニューを打ち出したり、3000個のキャンドルイルミネーションや「しらさぎ緑地公園」の桜の木のイルミネーションなどによるクリスマスの演出をしたりしている。

これらが奏功し、当社が毎年行っている「地域ブランド調査」の2011年の調査結果では、下呂市の「泊まりたい宿泊施設がある」のイメージランキングでは全国7位と、09年の13位、10年の12位から順調に評価を高めてきている。特に、20代の回答者の32.8%が「泊まりたい宿泊施設がある」と答えており、これは全国の市町村のうち3番目に多い。
この比率は全年代の13.1%(同7位)と比べると、とても評価が高いことがわかる。つまり、下呂温泉は冬の花火などにより、若い世代からの人気が高まっているからだ。
こうして、冬の花火は、下呂温泉の将来を照らす明るいシンボルとなっている。
(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)
参考:下呂温泉
※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2011年12月号に掲載されたものです
冬の花火を毎週打ち上げて集客増~ 下呂温泉(岐阜県下呂市)
2014年09月14日更新
冬の下呂温泉で花火大会が毎週土曜日に開催される。凍るような冬空に大輪の花火が打ち上げられ、これを目当てに集まった多くの宿泊客が大きな歓声をあげる。下呂温泉の冬の魅力を高めようと2000年から始まったこの企画、いまでは貴重な集客イベントに定着し、イメージアップと集客につながっている。
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