弊社が実施している、消費者が各地域に抱いているイメージ等を明らかにする「地域ブランド調査」は2006年から調査を開始し、2015年実施分(現在実施中。9月下旬発表予定)で10回目を迎える。本項では10回目の発表を前に、調査対象が1000市区町村となった2007年から2014年までの8年間の結果推移が示唆する地域に対する消費者イメージの変容についてレポートする。
※地域ブランド調査の調査概要等については地域ブランド調査2014特設ページをご参照ください。
今回取り上げる指標は「認知度」。同指標は任意の地域名について「よく知っている」から「名前も知らない」まで回答者に5段階評価してもらい、それぞれの回答者比率に応じて加重平均し点数化。各地域が全国から見て、「どの程度知られているのか」また「他地域と比較してどのような位置付けにあるのか」を把握することを目的としている。
下記【図1】は左から2014年調査結果の認知度平均値(20.4点)、同年1位(60.3点)だったA市、同じく1000位(2.2点)だったB町の結果である※1。A市は「名前も知らない」と回答したのが3.0%と、ほぼ全ての回答者がA市を認知しているのに対して、B町では「名前以外も知っている」、「名前だけは知っている」を合わせた割合が5.7%に留まっており、90%以上が「名前も知らない」と回答している。なお、全国平均をみると、回答者の約半数は任意の地域を認知しているという結果となっている。
【図1】
上記の結果を踏まえた上で、以下からは認知度の各年平均や分布の結果から、消費者が各地域をどう認知しているのかを見てみる。
■8年間ほぼ変わらない認知度の平均
まず、【図2】の認知度の平均値推移をみると、8年間で最も平均値が高かったのは2011年の21.9点、対して最も低かったのは2014年の20.4点となっている。なお、2011年の結果に関しては、同年3月に発生した東日本大震災の影響で三陸三県の市町村を中心に認知度が上がったことが要因となっているが、この8年間の認知度平均の差は最大で1.5点と、回答者全体でみると顕著な変化は見られなかった。
一方、データを詳細に見てみると2つの変化が起こっている。
■変化1.高年齢層の認知度低下が顕著
年代別平均の結果を見ると、各年の傾向として<高年齢層ほど認知度も高くなること>が挙げられる。言い換えると年を重ねるごとに地域に関する情報や知見も蓄積・記憶されていく傾向にあるといえる。
しかし、一つ目の変化として挙げられるのが「高年齢層回答者の認知度低下が顕著」であることだ。【図2】の20代、60代の平均推移をみると、60代の平均値が大きく低下していることがわかる。20代平均と比較すると2007年には60代平均は29.9点で20代は15.6点と14.3点あった差が、2014年には60代が23.0点、20代が16.4点と差が7.4点にまで縮小しており、<高年齢層ほど認知度も高くなる>という認知度の傾向は弱くなってきている。
【図2】
■変化2.地域間の認知度の差は縮小傾向
二つ目の変化は、「地域間の認知の差が縮小傾向」にあることが挙げられる。先に示した【図2】中にある、各年の標準偏差の値が2007年の14.3から2014年には12.4と、この8年間継続して低下、つまり各地の認知度の差・ばらつきが縮小傾向にあることを示している。では具体的にどのような形で縮小しているのか。
そこで、2014年と2007年の認知度について点数分布を表したのが【図3】になる。45点以上の高い得点(認知度)を得ている地域は、2007年には全体の8.1%だったのが2014年には3.7%と半減。一方、5点未満の非常に認知度が低い地域の割合も2007年の9.5%から2014年には4.3%とこちらも半減している。その減少分が45点未満から5点以上のゾーンでそれぞれ占める割合が増加しているのが分かる。
【図3】
以上、地域ブランド調査の項目「認知度」の1000市区町村結果について、8年間の結果推移から
●認知度の平均点は8年間大きな変化なし
●高年齢層の認知度が低下傾向
●各地の認知度差は縮小傾向
というトピックを今回は紹介させていただいた。
今日、日本各地では地方創生総合戦略の策定やシティプロモーションの実施など、地域内外への働きかけも盛んに行われている中で、今回のレポートが施策立案等の一助になれば幸いだ※2。
※1 グラフの視認性を高めるため、選択肢のうち「よく知っている」「知っている」「少しだけ知っている」を「名前以外も知っている」にまとめて表記している。
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(文責:安田 儀 ブランド総合研究所 コンサルタント)