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安納いものブーム到来!(鹿児島県種子島)

安納いものブーム到来!(鹿児島県種子島)

焼きいも用のいもとして急速に人気が高まってきたのが「安納いも」。鉄砲伝来とロケットで有名な鹿児島県の種子島で栽培されているいもで、サイズは小さいがとびっきりの甘さがあるいもだ。水分が多く、焼きいもにするとまるでクリームのようにネットリとした食感になる。時間をかけて上手に焼くと糖度が40度前後になる

焼きいも用のいもとして、ここ数年、急速に人気が高まってきたのが「安納いも」。鉄砲伝来とロケットで有名な鹿児島県の種子島で栽培されているいもで、サイズは小さいがとびっきりの甘さがあるいもだ。水分が多く、焼きいもにするとまるでクリームのようにネットリとした食感になる。時間をかけて上手に焼くと糖度が40度前後にもなる。

実は種子島は日本におけるさつまいもの栽培発祥の地でもある。いまから300年以上も前の1698年(元禄時代)、種子島は相次ぐ台風の被害とその後の日照りによって農地が荒れ、島民たちも食うに困る暮らしをしていた。当時の島主であった種子島久基が、琉球王国(現・沖縄県)で日照りに強く収穫が多い、しかも旨いという作物の噂を聞きつけた。そこで琉球王に苗をわけてもらえるよう親書を送り、届いた一籠のいもを元に、家臣に命じて栽培させたのだ。

こうして種子島を救ったいもが、その後、薩摩の国に伝わり、栽培しやすくそして大きく改良されて全国にさつまいもとして広まった。それから長い年月が経ったが、種子島の安納地区に、そのさつまいもの原種に近いいもが農家の自家用として育てられていた。それが安納いもだ。

安納いもは、数年前までは大きさが小さいことから、なかなか流通してなかった。大半はでんぷんの材料になっており、栽培量も限定されていた。ところがでんぷんの材料となっていたのでは単価も上がらず、いも本来の特徴も全く生かされない。そこで、市場拡大と、生産者の所得向上をめざして、安納いものブランド戦略が開始された。

■最大の特徴は「焼いも」

まずは安納いもが他のさつまいもより優れている特徴を、わかりやすく消費者に伝えることが必要である。その特徴を明確にしたのは「焼いも」という利用方法の絞り込みだ。 この特徴が最も顕著な商品として「安納いもの冷凍焼き芋」がある。1個100gから200gという食べごろのサイズをじっくりと焼き上げたものを急速冷凍し、500gごとに袋詰めにしたものだ。

これだと、食べたいときに食べたい量だけ電子レンジで温めれば、すぐに焼きたての焼きいもになる。この手軽さと美味しさが評判となり、テレビ通販やインターネット通販などで人気になり、大手スーパーなども競うように取り扱い始めた。また、この「焼いも用のいも」として、生のいもも人気が高まった。(写真=安納いも)

こうして人気が高まってくると同時に、栽培する農家も増え始め、いもの栽培面積も増えるようになってきた。実際に、2006年から栽培農家数は毎年数10%ずつ増え、栽培面積と栽培量は5年間で数倍にもなった。そして、総販売価格もうなぎのぼりになっている。

■品質の安定と商標の管理

ところが、栽培量が増えるとどうしても品質低下が問題になる。つまり、新たに作り始めた土地や生産者の中には、十分に甘くないいもが混じるようになってしまい、また、サイズや形が悪かったり、キズがあったりする芋も増えてきてしまった。

甘くないいもや、形の悪いいもが混じると苦情やトラブル、イメージ低下の原因となる。苦労してようやく評価が高まり始めた安納いもの評判を低下させるわけにはいかないため、農協や行政が中心となって「安納いもブランド協議会」を立ち上げて、生産者に対して技術指導を行ったり、苗の一括管理を行ったり、販売に当たっても、独自の品質基準を設定したりするなど、島を挙げてブランド管理に取り組んでいる。

しかし、ここでさらに大きな問題に直面している。それは安納いもの人気に目をつけた他の産地が、生いもを勝手に栽培し、安納いもという名前で流通させ始めたことだ。

そもそも、安納いもは、種子島の西之表市安納にある鹿児島県農業試験場において種苗選抜という方法で改良されたものを、その試験場の地名である「安納」の名を冠して命名されたもの。このように本来は種子島地区だけに限定許諾された品種であり、種子島以外で栽培されたものは、品質も異なり、名前の使用はできない。

また、種子島の温暖な自然が生み出したいもであり、他の地域で作られたものは種子島産と同じ味にはならない。年間平均気温19℃という温暖な気候と、ミネラルを豊富に含んだ土壌。これらが安納いもの特徴につながっている。ところが、他地域で作られた品質の異なったいもが安納いもと呼ばれてしまうと、安納いも自体のイメージが低下してしまうことになり、地域としての貴重な財産が目減りしてしまうことになりかねない。

そこで、種子島では地域団体商標に登録申請を行い、他の地域で作られたいもが安納いもと勝手に呼ばれないようにしているのだ。

■地域団体商標は拒絶査定に

ところが、思いがけぬ結果が待っていた。つまり、地域団体商標として拒絶査定となってしまったことだ。原因は他地域で「安納いも」という名称で生産や販売がされていたこと。他地域で使用されはじめる前から、種子島で「安納いも」という名称が使われいたという証拠を提出することが求められたが、初期段階での商標の管理があいまいだったことから、その証拠を揃えることができなかった。

そこで、地域団体商標の申請は取り下げて、認証マークおよび「安納いも」のキャラクターのマークを一般商標として出願することとなった。

(※この部分は出版後に追加表記をしたものです)

■特徴を生かした商品開発へ

また、安納いもの特徴を生かした付加価値の高い加工品の開発にも取り組んでいる。その第一号商品が「安納プリン」。焼きいもにしたときの甘さと、クリームのようなトロトロの食感を生かした加工品として、フランス料理の著名シェフ・藤井正和氏とのコラボで誕生した商品で、東京の百貨店や展示会で期間限定で発売したところ、大人気となった商品だ。(写真=安納プリン)

ただし、手作りと材料調達の面から大量生産はせず、特定店舗だけの販売にとどめている。それは、売ることを優先するのではなく、本当に必要なのは種子島で商品を開発し、販売していけるような組織とノウハウを構築することであるからだ。

いま、地元の菓子屋、加工業者なども加わって、安納プリンを島内で製造するラインの整備と、担い手である人材の育成を始めている。さらに、第二、第三の加工商品を開発中だ。その取り組みの中で、種子島の廃校となった中学校の校舎を加工工場に改造もしている。また、前出の藤井シェフが講師となって、地元の事業者を対象にした調理教室も行っている。

このように、種子島は単にいもそのものを売るのではなく、それも、地域活性化に結びつくような新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいる。それも、商品を作るだけではなく、地域内外の加工業者や流通業者などが有機的な連携をし、新たな可能性を高めることを目指している。

いま農林水産物と中小企業とが連携した農商工連携が全国で取り組まれているが、こうした取り組みがきっかけとなり、地域活性化につながるようなシナリオが重要だろう。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

外部リンク:安納いもブランド推進本部

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2010年6月号に掲載されたものです。

 

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