第155回 丸亀うちわ

香川県丸亀市で生産される先を細く割った竹を扇状にひろげて紙を貼ったうちわ。柄の部分は丸いものと平らなものがあり、伝統的工芸品に指定されている。

江戸時代初めに金刀比羅宮の参詣の土産物として、金光院の住職が柿渋を塗った赤色のうちわに丸で囲った金の文字を入れたうちわを考案したのがはじまり。後に丸亀藩が下級武士の内職としてうちわの製造を奨励したことで、地場産業に発展した。伊予の竹に土佐和紙、阿波ののりをつかって作られることから、「伊予竹に土佐紙貼りてあわ（阿波）ぐれば、讃岐うちわで至極（四国）涼しい」と歌われた。

その後、紙を貼る機械の導入や、プラスチックを使った商品の開発なども丸亀で進められた。現在は丸亀市のうちわ産業全体では、事業者数50社、総従業員数529人で、全国での生産量の約９割にあたる年間8300万本が製造されている。

（ブランド総合研究所　田中章雄）

※当記事は、2013年8月26日発行の日経ＭＪ（日経流通新聞）に「地域ブランド　AtoZ」として掲載しています。記事は日本経済新聞社の許諾を得て います。 無断での複製・複写・転載を固く禁じます。