4月25日(土)から5月10日(日)まで新宿中央公園で初めての「大牛肉博」(主催:大牛肉博実行委員会)が開催されている。近年、今回の「大牛肉博」のように各地域の特産品や地域そのものをPRするためのイベントが全国各地で数多く開催されており、イベントには生産団体を始め自治体関係者なども参加をしている。各自治体が自地域の産品、または地域を周知していく取組みについて、今回は同イベントに参加している一関市のケースを紹介する。
■「大牛肉博」イベント開催
4月25日(土)から5月10日(日)まで新宿中央公園で初めての「大牛肉博」(主催:大牛肉博実行委員会)が開催されている。同イベントは「いわて南牛(岩手県)」、「鹿児島黒牛(鹿児島県)」、「神戸ビーフ(兵庫県)」、「仙台牛(宮城県)」、「米沢牛(山形県)」(50音順)といった日本各地からブランド和牛の生産団体が参加。各ブース前には当日使っている和牛の「生産者名」、また「個体識別番号」を掲げ、牛丼(提供期間4/25~5/2)、焼肉丼(提供期間5/3~5/10)などをそれぞれの生産団体が提供し、来場者に各産地の和牛の美味しさをPRしている(入場は無料。丼は各産地ブース共通で1杯1,000円)。
■各地の産品をPRする取組み~ 一関市のケース ~
近年、今回の「大牛肉博」のように各地域の特産品や地域そのものをPRするためのイベントが全国各地で数多く開催されており、イベントには生産団体を始め自治体関係者なども参加をしている。各自治体では如何にして自地域の産品、または地域を周知していくか試行錯誤されているのではないだろうか。
そこで今回は「いわて南牛(岩手県)」で同イベントに参加している一関市に取組みについて話を伺った。いわて南牛は平成20年全国肉用牛枝肉共励会で最優秀賞を受賞するなど、市場から非常に高い評価を得ているものの、一般的にはまだまだ知られていない。そこで生産団体、行政等関係者が一丸となってその美味しさを伝えるべくPRを進めており、取材当日(4/29)には平山大輔一関市副市長も応援に駆け付け、自ら看板を持って呼び込みを行い、官民一体となって地域のPR活動を展開していた。
【地域産品をPRする平山一関市副市長】
■参加の舞台裏
「実は今回の大牛肉博の準備期間は、一ヶ月半しかなかったんです」と今回の舞台裏を明かしてくれたのは一関市役所の岩淵敏郎農林部次長。同イベントは昨年10月に実施予定だったが、昨夏のデング熱国内感染の発生を受けイベントは延期に。主催者が今回の実施に向け、参加地域を新たに検討しているという情報得て、主催者と折衝、地域内の各関係者が連携し急きょ参加に至った。わずか一ヶ月半で参加にまでたどり着いた背景には、これまで地域が積み上げてきた取組みの成果があった。
■生産者団体・地域事業者・行政の日頃からの連携
一関市では「地産外商」を掲げ、産品や観光を通じて地域外に「一関のファン」を増やす活動を継続的に行っている。「うまいもん!まるごといちのせきの日」という一関産品を使った料理を振る舞いながら、地域の取り組みなどを紹介し交流する催しを首都圏で実施。平成25年からこれまでに12回開催していた。市内外の各事業者と一関市役所が何度も連携して催しを実施していく中で、急なイベント参加でも短期間で準備できる協力体制、人間関係が出来上がっていた。
■多様なバックグラウンドの「一関ファン」と地域の関係
また、「『うまいもん!まるごといちのせきの日』で毎回参加される方はおおよそ3割程度。7割はこれまで参加してくれた方の紹介など新規の方」(岩淵次長)とのこと。同様の催しを継続実施すると、得てして参加者の大半が固定化してしまうケースもある。岩淵次長は「飲食関係者だけではなく、メディアやIT関係、研究者など多様なバックグラウンドの方にお声掛けしている」そうで、ある分野だけに集中するのではなく、多様な方々と交流する中で『一関ファン』に広がりが生まれるよう工夫を重ねている。そのような交流の中で「一関ファン」になってくれた人々が、市などに情報提供や提言を寄せてくれる関係性ができつつある。今回の「大牛肉博」参加についても、そのような日々の交流の中から得られた情報や協力関係が背景にある。
以上のように、一関市では自市で主催している「うまいもん!まるごといちのせきの日」などの実施を重ね、地域内外の連携を高めると共に「一関ファン」という協力者を得ていたことが今回の「大牛肉博」参加に繋がっていったものと思われる。今回の参加が新たな「一関ファン」づくりの契機となるのか、今後の取り組み成果に注目していきたい。
■大牛肉博イベント概要
イベント名:ブランド和牛の公式祭 大牛肉博
期 間:4/25(土)~5/10(日)
※各日午前11時から午後10時まで(LO.午後9時)
会 場:新宿中央公園
主 催:大牛肉博実行委員会
企画・運営:ブルースモービル
協 力:いわて南牛振興協会、JA鹿児島県経済連、株式会社JA食肉かごしま、
神戸肉流通推進協議会、仙台牛銘柄推進協議会、米沢牛銘柄推進協議会
後 援:公益社団法人 全国食肉学校
(文責:安田 儀 ブランド総合研究所 コンサルタント)