2023年に最も魅力度が上昇した北広島市
今年、市区町村で最も魅力度の点数が上昇したのは北広島市(北海道)となった。同市は前年の7.8点(474位)から12.9点(289位)と5.1点上昇。他の項目でも認知度や情報接触度といった地域名の周知性に関する項目なども上昇している。ニュースリリース(2023年10月13日)でも言及したトピックだが、改めて同市の調査結果について追加分析した結果を紹介する。
認知度が2018年前後と2023年に上昇
北広島市の認知度について、10年間の推移をみると、2014年は13.1点で同年の全国平均(20.4点)を大幅に下回っていた。しかし、2017年には19.8点と同年の平均点(21.2点)とほぼ同じ水準まで上昇している。2017年から2019年にかけて全国平均の水準で推移していた点数は、2020年・2021年と若干低下している。そして、2022年には再びスコアが上昇し、2023年には26.6点と、この10年で唯一全国平均を上回る結果となっている(図表1)。
2014年と2023年の認知度の回答者比率を比較すると、2014年の認知者の割合(「名前のみ知っている」含む)は32.5%だったが、2023年には60.1%と、この10年間で約30ポイント増加しており、”北広島市”を認知する割合が倍増している(図表2)。
なお、関連項目の情報接触度の回答者割合も「1年間に一回以上同市の情報に触れた」と回答した割合は、11.8%(14年)から37.8%(23年)と、こちらも大幅に増加している。
【図表2.北広島市の認知度回答者割合比較(2014年・2023年)】
認知上昇のフックは“プロスポーツチーム・選手”
具体的に市のどのような要素で認知が広がったのかについて、2018年から調査項目に加えた「地域コンテンツの認知」の結果を確認する。
「海・山・川・湖などの地理的名称」など地域コンテンツ17項目の認知について、それぞれの回答者の割合(%)を算出。なお、ここでは認知度の設問において当該市区町村を「名前も知らない」と答えた人は算出の対象外(無回答)とした。
下記の図表3は、同市の直近三年間の各項目結果推移で、項目の一つ「プロスポーツのチームや選手」の回答者割合が、2023年に大幅に上昇していることが分かる。
【図表3.北広島市の「地域コンテンツの認知」結果推移(2021~2023)】
「プロスポーツのチームや選手」の2018年からの推移をみると、2018年の認知率は4.8%で全国24位と、他地域と比較しても既に高い想起を得ている。そして、2023年には18.3%(同3位)と、前年の6.4%から認知率が11.9ポイントも上昇している。
本項目に関連する同市の出来事としては、プロ野球球団の本拠地移転で、2023年3月に北海道ボールパークFビレッジが開業したことが挙げられる。開業以前にも2016年の誘致表明や2018年のきたひろしま総合公園敷地への移転内定、また2020年のスタジアム命名権発表等など、一連の出来事、情報発信がなされている。
これらが“北広島市”という地名から「プロスポーツのチームや選手」という想起・認知につながっている要因だと思われる。
【図表4.地域コンテンツの認知「プロスポーツのチームや選手」回答者割合推移(2018~2023)】
そのほかのスポーツ関連項目も上昇
地域ブランド調査では、「地域コンテンツの認知」の他にも「スポーツ」に関連する調査項目がある。一例として、調査設問「地域資源評価」の選択項目に「スポーツの参加・観戦が楽しめる」がある。
同市の結果では、2017年頃から全国平均を上回り回答者比率が徐々に上昇しており、2023年には19.5%で、前年から10ポイント上昇している。北広島市という地域名から「スポーツ」を想起、評価する傾向が強くなっていることがわかる。
各地域で魅力的だと思う地域資源を問う設問。「海・山・川・湖などの自然が豊か」など17項目の各項目に回答した人の割合(%)を算出。
関連する項目は「スポーツの参加・観戦が楽しめる」。
【図表5.地域資源評価「スポーツの参加・観戦が楽しめる」回答者割合推移(2014~2023)】
観光意欲を示す回答者も「スポーツ観戦」に期待する割合が上昇
これら、同市の「スポーツ」に関する認知や評価が、行動意向に与える影響について観光意欲度の結果から考察する(観光意欲度の概要等は別記事「居住意欲度と観光意欲度の属性別結果比較」を参照のこと)。
北広島市の観光意欲度は、近年上昇傾向にある。特に2023年は全国平均と道内平均(64地域対象)が前年よりも低下する中、同市のスコアは27.4点で前年から4.1点上昇している。
【図表6.北広島市の観光意欲度10年推移(2014~2023)】
そこで、2021年から2023年の各年で同市に観光意欲を示した回答者(「ぜひ行きたい」または「機会があれば行ってみたい」に回答)を分析軸に、設問「地域資源評価」の結果をクロス集計した結果、2023年に「スポーツ参加・観戦」の回答者割合は34.2%で前年の16.4%から大幅に上昇していることが分かる。「スポーツ」に関する事柄が、認知されるだけではなく、北広島市に対する今後の行動意向にも影響を与えている。
【図表7.北広島市に観光意欲のある回答者が評価する各地域資源の回答者割合】
※各年の個別報告書・属性クロス集計から再計算。
以上から、北広島市という地域名称は”プロスポーツ”を核に認知が広がっており、特に2023年は顕著な伸びがみられた。また、認知に留まらず、観光意欲度を例とする消費者の行動意向にも影響を及ぼしているという結果となっている。
本項図表データが収録されている報告書フォーマット
図表1,4、5、6:10年データべ―ス(2014-2023)に収録
図表2,3:該当年の個別報告書(北広島市)、またはデータパック1047に収録
図表7:該当年の個別報告書(北広島市)収録内容から別途再集計
【図表1.北広島市の認知度経年推移(2014-2023)】