地域ブランド調査の結果はホームページ上で一部公表しているが、公表している結果は主に「単純集計値」、つまり「全国からみた評価」となっている。
調査では単純集計に加えて、回答者の属性毎のクロス集計なども行っている。ここでは、各項目の属性クロス集計結果からみる特徴を紹介する。
1.分析する調査項目と、回答者属性について
本稿では、1,000市区町村の居住意欲度と観光意欲度について、属性分析を行った結果からみえる特徴を紹介する。分析する属性は、回答者の「居住地別」「年代別」「性別」の集計結果についてで、それぞれ以下のような分析を行い、各項目の特徴などについて明らかにする。
<分析対象の調査項目>
今回分析の対象とするのは、2023年調査結果から「居住意欲度」と「観光意欲度」を用いる。各地域に対する行動意欲を問う調査項目で、両項目とも魅力度と相関が強い項目となっている。
調査項目 | 概要 |
---|---|
居住意欲度 | 提示した各地域名について「住んでみたいか」を5段階評価で回答してもらいスコア化(0点~100点)。 |
観光意欲度 | 同「観光や旅行に行きたいか」を4段階評価で回答してもらいスコア化(0点~100点)。 |
<各属性の説明と分析方法>
調査結果は、回答者の属性別や設問結果などを分析軸にクロス集計を各種実施している。ここでは、クロス集計結果のうち、回答者の「居住地」「年代」「性別」を軸に分析を行う。各属性の概要と分析方法は下記の通りとなっている。なお、分析方法は各属性の集計結果と分析のイメージ図も併せて示す。
属性 | 分析内容 |
---|---|
居住地別結果 | 「北海道・東北」等6区分の結果について、標準偏差を算出。 数値が小さいと居住地間の結果に差がなく(0が下限)、大きいほど居住地間の結果に差がある。 |
年代別結果 | 「20代」等6区分の結果について、区分を横軸、各区分の点数を縦軸に置いて回帰直線の傾きを算出。 マイナス値は若年層の評価が高い傾向、プラス値は高年齢層の評価が高い傾向を示す。 |
性別結果 | 「女性」「男性」それぞれの結果から、男性結果に対して、女性結果の比率を算出。 マイナス値は男性の評価が女性よりも高く、プラス値は女性の評価が男性よりも高いことを示す。 |
2.居住・観光意欲度の属性別結果の平均比較
両項目について、単純集計の平均点と各属性分析結果(平均値)は下記の通りとなっている。
※なお、本稿では数値を比較しやすいように、各標準偏差、回帰直線の傾き等は小数点2位以下、変動係数は小数点3位以下を四捨五入して表記している。
【表:調査2項目の各平均】
平均点は居住意欲度の6.1点に対して、観光意欲度は21.8点となっている。各項目の最高点は100点で、スコアの算出方法(各選択肢に付与した加重度)は異なる点に留意が必要だが、観光意欲度の方が意欲を示す傾向となっている。
居住地別分析(標準偏差)は、居住意欲度の2.1に対して観光意欲度は4.3となっている。ただし、両指標の平均点の差が大きいことから、平均点の高い観光意欲の方が標準偏差が大きくりなりやすい点は留意が必要となる。なお、それぞれの変動係数(標準偏差/平均値)は居住意欲度が0.34,観光意欲度が0.20となっており、2つの設問結果を相対的に比較すると、居住意欲度の方がばらつきが大きいという結果となっている。
年代別結果では、居住意欲度のマイナス1.3に対して、観光意欲度はマイナス0.9となっている。両項目で若年層の意欲が高い傾向にあるが、居住意欲度の方が、より顕著な傾向となっている。
性別は、居住意欲度のマイナス0.2に対して、観光意欲度は0.0と、居住意欲度が男性からの評価が高い傾向に対して、観光意欲度は男女差がほぼない結果となっている。
なお、1,000市区町村の結果を分布図にすると下図のようになる。居住意欲度が観光意欲度と比較して、若年層、男性から評価される傾向が強いことが分かる。
【図:居住・観光意欲度の属性別結果分布図(縦:居住地、横:年代)】
【図:居住・観光意欲度の属性別結果分布図(縦:性別、横:年代)】
3.居住意欲度上位10地域の特徴
次に、両項目の上位10地域に焦点を当て、結果を概観する。
まず、居住意欲度の上位は下記の通りとなっている。1位は横浜市で、2013年から11年連続で1位となっている。同市に居住意欲を示している割合は56.2%となっている。
【表:居住意欲度上位10地域(2023年)】
次に、各属性別結果を表したのが下図となる。
居住地別結果(左図の縦軸)では、札幌市、福岡市、仙台市が、回答者の居住地間で差が大きくなっており、1,000市区町村中でも突出した差=特徴となっている。なお、3市とも自市が属す居住地(例:札幌市は「北海道・東北」居住者)の結果が突出して高くなっており、特定の居住エリアからの評価が高い傾向となっている。他方、京都市、金沢市、軽井沢町は1,000市区町村平均よりも標準偏差が小さくなっており、居住地別結果の差が小さく、居住エリアを問わず、全国的に満遍なく居住意欲を持たれている。
年代別結果(左右図共に横軸)では、神戸市を除いた9市区町で回帰直線の傾きがマイナス値となっており、若年層からの評価が高い傾向といえる。特に港区(東京都)は10地域の中で最も傾向が顕著となっている。なお、1,000市区町村平均を起点にみると、京都市、鎌倉市、軽井沢町は若年層からの評価傾向がやや小さくなっている。
性別結果(右図の縦軸)では、10地域中9地域で、女性よりも男性の方が居住意欲が高い傾向を占めている。ただし、1,000市区町村平均と比較すると、9地域すべてで平均よりも男性の評価傾向は小さくなっている。なお、鎌倉市が10地域の中で唯一、女性の意欲が男性を上回っている結果となっている。
【図:居住意欲度上位10地域の分布】
4.観光意欲度上位10地域の特徴
続いて観光意欲度の上位10地域は以下の通り。最も観光意欲度が高かったのは、札幌市で61.2点。前年の65.9点から4.7点低下しているが、過去10年間でみると依然として高い点数水準を保っている。同市には81.8%の回答者が観光意欲を示している。
【表:観光意欲度上位10地域(2023年)】
居住地別結果(左図の縦軸)では、9市が1000市区町村平均よりも標準偏差が小さくなっている。居住地間の差が小さく、全国的に満遍なく観光意欲を持たれている。他方、函館市は地域間の差が大きい結果となっている。同市は「北海道・東北」居住者からの観光意欲が特に高くなっている。
年代別結果(左右図共に横軸)では、横浜市や札幌市、小樽市などが若年層からの評価が高い傾向にある。他方、金沢市や鎌倉市などは高年齢層からの評価が高い傾向となっており、各地域で評価が高い年代に特徴が出ている。
また、性別結果(右図の縦軸)では、10市すべてが男性よりも女性の評価が高い傾向となっている。
【図:観光意欲度上位10地域の分布】
5.その他特徴的な結果について
ここでは、南小国町(熊本県)の観光意欲度の結果について紹介する。
同町の観光意欲度は、単純集計値では17.9点で全国580位となっているが、居住地別結果「九州・沖縄」居住者に限ると47.6点となる。これは当該属性において、1,000市区町村中30番目の高さ。他の居住地結果が10点台で推移する中で、突出した結果となっている。居住地別結果の標準偏差は最も高くなっており、特定の地域から非常に高い評価(意欲)を持たれている事例となっている。
グラフ一部訂正:図中の南小国町の属性別結果に一部誤りがありましたので、差し替え訂正させていただきます(2023/11/15)
【図:南小国町の観光意欲度属性別結果】
【図:各属性別結果イメージ(上:居住地別結果、中、年代別結果、下:性別結果)】