MENU
【弊社社員を装った迷惑メール(なりすましメール)にご注意を】 添付ファイルの開封や記載URLへのアクセスを行わず、メールを削除していただくようお願い致します。
矢吹町の新名物誕生、ラーメンに鳥の顔!(福島県矢吹町)

矢吹町の新名物誕生、ラーメンに鳥の顔!(福島県矢吹町)

福島県矢吹町で、前代未聞のなんともユニークな新しいご当地ラーメンが誕生した。その名は「やぶきG麺」。見てインパクトのある汁なしトマトラーメンだ。

福島県矢吹町で、前代未聞のなんともユニークな新しいご当地ラーメンが誕生した。その名は「やぶきG麺」。見てインパクトのある汁なしトマトラーメンだ。
町の若者を中心に構成された「矢吹町地域ブランド検討会議」が試行錯誤を重ねて開発したラーメンは、トマトベースの味付けをした汁なし麺。その麺の上に、トマトとゆで卵、ネギ、チャーシューなどの地元産の具材が乗っている。

トマト味のラーメンも珍しいが、汁なしのラーメンも珍しい。ところが、それ以上に見る人を驚かせることがある。それはラーメン自体が矢吹町のキャラクター「やぶきじくん」にデザインされていることだ。顔はトマト、目玉はゆで卵、頭はネギ、くちばしはチャーシュー。やぶきじくんがラーメンに乗り移ったようだ。



■地元若手で検討会議

矢吹町は日本三大開拓地の一つで、五本松の松並木や三十三観音などの史跡、大池公園、あゆり温泉などの観光資源があり、トマトなどの農産物の栽培も盛んに行われている。

町の特産品としては、地元産のスグリの実を使った「グーズベリージャム」や、白ウリとキュウリを酒粕に漬けた「さわやかいいなづけ」などがある。ところが、産品の購入や町に観光客を呼び込むに至るまでのパンチが不足していた。

また、2011年3月の東日本大震災では、多くの商店や民家が倒壊する被害を受け、地元産の農産物については風評被害もあって、なかなか厳しい状況が続いている。地域をけん引する起爆剤を創出し、これを契機に矢吹町をPRしていくことが不可欠となっていた。

そんな中、町役場と商工会の呼びかけにより、地元の農家や商店などからヤル気のある若手が集まって、「矢吹町地域ブランド検討会議」を立ち上げることになった。同会議メンバー13人を中心に、矢吹町の復興に向けた新たな商品やメニューの開発と、地域イメージの構築をめざして活動を行うための組織だ。

この検討会議で、まずは地域ブランドの核となる地域資源の洗い出しを行ったが、その際に注目したのはトマトだった。福島県はトマト栽培が盛んで、平成21年の収穫量および出荷量は、いずれも全国第2位を誇る。矢吹町は作付け面積、収穫量、出荷量とも、県内第2位(平成21年)という福島県内でも有数の産地だ。また、高糖度で評判の高い「旬太郎トマト」をはじめとして、こだわりを持って栽培しているトマト農家も多い。

そこで、トマトを使った新商品、または飲食店のメニューを検討することになった。思いついたのは「ラーメン」だ。隣接する白河市の醤油ベースのご当地ラーメンである「白河ラーメン」は人気が高く、「城下町ラーメンフェスティバル」などのイベントや市街地の活性化などにも大きく貢献している。その影響もあってか、矢吹町内にもラーメンを提供する店は比較的多い。しかも、集まったメンバーの中には無類のラーメン好きが複数いた。

この2つを結びつけた「トマトラーメン」を矢吹町独自のご当地ラーメンとして開発し、「白河ラーメンに負けないような矢吹町独自のラーメンを作ろう」と意見はまとまった。町内外でのイベントで提供したり、町内の飲食店でのメニュー化したりすることによって、地域活性化と町のイメージアップをめざすのだ。

こうしたご当地メニューを開発するには、従来から提供している町内の店舗に協力してもらう方法と、外部の有名シェフを招へいして開発に協力してもらう方法、それに自ら試行錯誤で開発する方法の3つのやり方が一般的だが、彼らは3番目の自分たちで開発することを選んだ。

この方法は、専門家ではないために完成度が高くなりにくいことと、事業化に結びつきにくいという懸念がある。しかし、自分たちで開発することで地元への定着がしやすく、完成するまでの工程が今後の活性化の取り組みに確実に役立つという利点があるのだ。

■インパクトが足りない!

検討会議のメンバーは、何度も何度も試作と試食を行い、トマトラーメンの企画を練っていった。各自がラーメン店を食べ歩き、自宅で何度も試作を繰り返した。そして、6回目の委員会でついにコンセプトが固まった。それは「汁なしトマト麺」だった。

「これはいける!」

「意外とうまい」

少し甘めに仕上げたソースがトマトの酸味を消し、味にまとまりがでている。 試食の結果は大成功といいたいところだが、1つだけ大きな欠点があった。それはインパクトに欠けることだ。

汁がないと一見しただけではラーメンらしく見えないし、見栄えもあまりよくないために、「食べたい」という意欲が起きにくい。トマトは麺にからまっているために、真っ赤な色の鮮やかさも活かされない。

「どうすればいいだろうか・・・」。メンバーは頭を抱えた。 そのとき、メンバーの目に入ったのは、矢吹町のマスコットキャラクターである「やぶきじくん」だった。カラフルな顔が、汁なしトマト麺を見て笑っている。「これだ!」スタッフはあわただしく動き出した。
できあがったラーメンを目の当たりにしたスタッフ全員が、デジカメやケータイを取り出して写真に収めた。そして家族や知り合いにメールで送り始めた。その瞬間、この汁なしトマト麺のPR効果は約束された。

名前はキャラクターの名前にちなんで「やぶきG麺」で即決した。

■フォーラムで披露

2月13日に町内のホテルで開催した「農商工連携フォーラム」でこの「やぶきG麺」のお披露目と、来場者による試食会が実施された。スクリーンに映し出されたアップ写真に歓声があがり、運ばれてきた実物のラーメンをカメラに収める人が続出。試食アンケートの結果では、一日も早い商品化を期待する声や、ぜひ自分の店でも提供したいという意見が多く寄せられた。

3月10日からの2日間、大雪という悪天候の中、郡山市で行われた「こおりやま元気発信フェスティバル」では、用意した120食のラーメンが早々に完売した。

新年度には、町内外のイベントやお祭りなどでの提供を通して、広く「矢吹町のご当地グルメ」としての確立を目指すほか、地元飲食店でのメニュー化の拡大、関連商品の開発などを積極的に展開する。やぶきG麺は矢吹町の活性化につなげる「起爆剤」として大いに期待されている。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

参考: 矢吹町

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2012年5月号に掲載されたものです

 

 

この記事のライター
関連記事
1500年の歴史を誇る越前和紙が、いま高級ブランドとのコラボでディスプレイに利用されるなど、欧州で注目を集めている。「越前和紙の里」の職人による世界への魅力発信の挑戦は続く。
公開: 2015-07-03 18:31:03
まるで銀行や旅行代理店のように、笑顔で住民にサービスする。弘前市役所は総合窓口システムや、コンシェルジュの導入などによる「窓口改革」を行い、住民からの評判が上昇している。“お役所”から“お客様”へ―。いま行政の窓口が変わりつつある。
公開: 2015-06-21 18:39:31
全国で取り組まれている地域ブランドの現状を、具体的な事例として紹介します。この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2010年4月~2014年3月まで連載されたものです。
公開: 2015-06-19 00:01:42
神楽の新舞発祥の地である安芸高田市には、22の神楽団が活動を続けている。全国屈指の神楽どころとして、いま勇壮華麗、スピード感にあふれる神楽を使ったまちおこしに取り組んでいる。
公開: 2015-06-15 10:57:00
マレーシアの首都クアラルンプールの中心部にある高級ショッピングモールの中に、「東京ストリート」が1年前にオープン。浅草を模した店や、日本の季節に合わせたイベントは、大勢の人で賑わっている。
公開: 2015-06-07 10:01:23
最新記事
2024年3月9日に東京駅前に石川県のアンテナショップ「八重洲いしかわテラス」がオープンする。 前日に開催された関係者向けの内覧会から、一足早く新しいショップについて紹介する。
公開: 2024-03-09 05:25:00
石垣市は2023年11月18日、ギネス世界記録「Most people grilling barbecuing simultaneously」挑戦イベントを実施。2,220人で既存記録の2,184人を36人上回り世界記録を更新しました。同イベントは、市の人口が同年7月に初めて5万人を超えたことを多くの市民と祝うため実施され、多くの市民がイベントを楽しみました。
公開: 2023-12-20 12:00:00
都内にある全国の道県のアンテナショップについて、利用の実態を明らかにするため「アンテナショップ利用実態調査 2023」を実施。その結果、コロナ禍により売上高が低迷したアンテナショップが、若者を中心として需要の高まりを見せていることがわかった。
公開: 2023-12-15 19:45:00
SDGsには17のゴールが設定されているが、どのゴールに取り組むことが最も企業の評価に効果的か? この疑問はSDGs担当者のほとんどが感じているだろう。 「企業版SDGs調査2023」では、対象となった290社のSDGs取組に対する消費者の評価の結果をもとに「重回帰分析」という手法において分析した。
公開: 2023-12-03 22:55:43
新潟県のアンテナショップ『表参道・新潟館ネスパス』は、建物の老朽化による建て替え工事に伴い12月25日に閉館する。 1997年に開業し、“食”を中心とした新潟県産品の販売・イベント開催、観光情報、UIターン就職・移住情報の提供により“にいがた”の新鮮情報を発信してきた。
公開: 2023-12-01 17:59:52

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル