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サービスエリアが旅の目的に? エンタ化進む新東名SA(静岡県)

サービスエリアが旅の目的に? エンタ化進む新東名SA(静岡県)

2012年4月14日に御殿場~三ヶ日がオープンした新東名高速道路。そこに設置された7ヵ所のサービスエリアの「NEOPASA」が大人気となっている。施設ごとにテーマを設定し、先進的で新しいコンセプトを基にした新たな商業施設だ。

2012年4月14日に御殿場~三ヶ日がオープンした新東名高速道路。そこに設置された7ヵ所のサービスエリアの「NEOPASA」が大人気となっている。施設ごとにテーマを設定し、先進的で新しいコンセプトを基にした新たな商業施設だ。



開通した新東名高速にあるサービスエリア(SA)に設置された複合商業施設「NEOPASA」には、従来のSAとは違った新しい店舗や施設、サービスがあり、大変な賑わいになっている。インターネットに投稿された利用者のブログには、「施設を利用したくて、わざわざ用事もないのに高速道路を利用した」などの声もある。



例えば駿河湾沼津SAにあるパン屋「箱根ベーカリー」は、地元天然酵母と箱根の水にこだわったパンが大人気だ。この店は犬を連れたお客も利用できるドッグカフェも設置し、犬向けのパンも販売している。

まるでデパチカ(百貨店の地下の食品売り場)のような雰囲気の「ロコマルシェ」に設置された農産品直売所には、沼津市をはじめ、富士市、富士宮市など近隣の農家の採れたて野菜や花が並ぶ。

生産者の名前入りのプレートが高級スーパーの売り場のように高さを活かした方法で陳列され、多くのお客でひときわ賑わいを見せている。野菜には生産者の名前が入ったシールも貼られ、誰が生産したものか一目でわかる。24時間営業に対応すべく、夜の遅い時間にも野菜を納品し、棚に並べる契約農家もあり、深夜でも新鮮な野菜を購入することができる。また、地元のトマトを使った「トマトロール」など、地元野菜のスイーツも人気だ。



日常的な商品や土産菓子を並べるという従来型のSAとは大きく異なっているこの施設。そこに集まる消費者の新たなライフスタイルが垣間見られる。つまり、SAは休憩を取るためのものではなく、そこが旅の目的の一つになり、楽しむための一部になっているということだ。

■地域ショップにレジャー性が求められる

もちろん、こうした傾向は新東名だけではなく、他の高速道路のSAにも見られる。東名の海老名SAや中央の談合坂など7ヵ所に設置された「EXPASA」なども同様だ。「ロコマルシェ」のような地域の農産品や地域産品などを扱った物産展がSAで開催されるケースも増えている。従来はその地域の農産品や土産品を販売するのに終始していたが、最近では対象エリアを広げて、やや広域のテーマでの物産展を開催することが多いようだ。

その理由は、地域の産品であっても、なんの特徴もない農作物や食品を並べただけでは消費者の購買意欲は沸かない。商品そのものに特徴があり、付加価値のあるものでなければならない。ただ、そうした商品はSAが位置する狭いエリアでは集めきれないため、やや広範囲に対象を広げて実施しているというわけだ。

北海道から九州まで、どこのコンビニやスーパーに行っても、8~9割は同じような商品が並んでいる。商品そのものが少なく貧しかった時代には、欲しいものがすぐに手に入れられることがとても重要であった。

ところが、いつ、どの店に行っても同じような商品しかなければ、購買意欲は湧かない。いつも同じものを買うのではく、たまには違うものを食べたり使ったりしたいという欲求に駆られる。 購買意欲を高め、内需を拡大していくためには、どこにでもあるようなものではなく、そこにしかないものを作り出すことが必要だ。

そして、そのような付加価値のあるものであれば、多少価格が高くても購買意欲が湧くからだ。実際に、ちまたではこうした付加価値のある商品の売上が伸びてきている。

例えば、東京都内にある都道府県のアンテナショップ。今では30店以上も出店しているが、多くの店の売上が好調だ。

かつて都道府県のアンテナショップで買い物をしていたのは、その都道府県の出身者が多かった。スーパーやコンビニでは手に入らない、昔から馴染みのある商品を買い求めに訪れていたというわけだ。ところが、最近はその土地とは直接関係のない消費者が大勢押し寄せている。

しかも、複数のアンテナショップをハシゴする人も少なくない。この人たちは、最初から目当ての商品があるわけではなく、「何かおもしろいものはないか」と探しているのだ。だから、北海道のじゃがいもに鹿児島のさつまいもと兵庫県のたまねぎを買い求める人だっている。アンテナショップが集中している銀座・有楽町・日本橋界隈を、地域特産品の博覧会のつもりで楽しんでいる。

つまり、アンテナショップは購買ニーズを満たすだけではなく、「ショッピングを楽しむ」というエンターテインメント性が高まってきているということ。そして、これはSAも同様だろう。旅行中の必需品を補充する場所という目的から、旅そのものを楽しむ要素になってきている。

エンタテインメント性を高める要素として「イベント化」もある。例えば浜松SAには「ミュージックスポット」があり、地元の楽器メーカーの楽器の展示のほか、ミュージックイベントを定期的に開催している。静岡SAでは、ガンダム・アパレルショップ「STRICT-G」があり、ガンダムのファンで大変な賑わいをみせている。

前出した駿河湾沼津SAにはドッグランとドッグカフェが設置されていて、連日、愛犬を連れた人が大勢押し寄せている。さらにロコマルシェではマグロの解体ショーを開催しており、これも人気だ。



レジャーのための通過点や休憩店だったSAが、いまでは旅の目的になったり、旅における楽しみの要素と一つになったりしている。それとともに、人気のある商品や、扱い商品、そして店舗コンセプトも大きく変わりつつあるのだ。

(文責:田中章雄 ブランド総合研究所)

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2012年8月号に掲載されたものです

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