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富士宮やきそばは地域への経済効果500億円!(静岡県富士宮市)

富士宮やきそばは地域への経済効果500億円!(静岡県富士宮市)

いま、全国でB級グルメのブームがおきている。その王者として君臨しているのが、富士宮やきそば学会だ。「三者麺談」「麺罪符」などだじゃれを武器に勝ち得た秘訣は・・・。

いま、全国でB級グルメのブームがおきている。その王者として君臨しているのが、富士宮やきそば学会だ。「三者麺談」「麺罪符」などだじゃれを武器に勝ち得た秘訣は・・・。

地域ブランドの成功事例と言えば、「富士宮やきそば」がその一つに挙げられる。たかが焼きそば。その「やきそばでまちおこし」を標榜に取り組み、これまでに500億円以上の経済効果を地元富士宮にもたらしている。

富士宮の焼きそばの特徴は、麺は硬い蒸し麺を使い、肉の変わりに肉カスを使い、鰹節ではなくいわしと青海苔の粉を振り掛ける。どうも戦後の貧しかったときに生まれたような懐かしい製法と味に近い焼きそばなのだ。この焼きそばを富士宮では各家庭で頻繁に食べ、いろいろな飲食店のメニューに並んでいる。



ある日、空洞化する富士宮の市街地を活性化するために「中心市街地活性化のための市民によるワークショップ」が開催された。そのメンバーとして青年会議所の渡辺英彦氏がいた。彼は「歩いて楽しいまち、路地裏の活性化」をテーマとして考えていたが、その路地裏にはお好み焼き屋など焼きそばを提供する店が多いことに気がついた。

その実態を調査するために、仲間たちと「富士宮やきそば学会」を組織化してしまい、その20人ほどのメンバーが「やきそばG麺」と名乗って調査を開始した。活動目標は、G麺のメンバーが150軒ほどの店を回って詳細な店のデータベースを作り、「富士宮やきそばマップ」を作成すること。マップを手に、市民や観光客に路地裏を回ってもらえれば、市街地の活性化につながると思ったからだ。

もしも、この名前が「やきそば振興組合」ではいまの成功はなかっただろう。「やきそば」という庶民的な食べ物と、「学会」というアカデミックな組織名とがあまりにミスマッチであるため、地元マスコミが飛びつき、たくさんの市民に活動が知れ渡った。

■B級だじゃれで全国区へ

やきそばG麺のもう一つの使命は、「ミッション麺ポシブル」。つまり、静岡県内外で行われるイベントに出張してやきそばを焼くこと。焼きそばを本業にしていない彼らは、富士宮のPRのために東奔西走した。富士宮市制60周年では富士宮に加えて、焼きそばで著名な秋田県横手市、群馬県太田市の3つの焼きそばの食べ比べを考えついた。

しかし、単に焼いて食べるだけでは物足りない。そこで3つの市長を招いて「一緒に焼きそばを盛り上げよう」という趣旨の協定書に調印し、巨大な鉄板で焼き比べをすることにした。これを「三者麺談」と命名したところ、テレビをはじめ多くのマスコミに取り上げられ、富士宮焼きそばの知名度は一気に全国区となった。

次なる挑戦は、焼きうどんでのまちおこしをしていた北九州の小倉との対決。「西のうどんか東のそばか。天下分け麺の戦い」と意気込んだこの対決イベントはテレビ放映された。

そして極めつけはB級グルメの全国大会。「八戸せんべい汁」でまちおこしをしていた八戸せんべい汁研究所の木村聡氏と意気投合。全国のB級グルメでまちおこしをしているチームを集めて、「B-1グランプリ」を各地で開催することになったのだ。

[caption id="attachment_2241" align="alignnone" width="300" caption="第1回B-1グランプリ八戸大会の開会式"][/caption]

第1回は青森県八戸で全国10団体が集まって開催し、1万7000人を集めるという大成功をおさめた。そこで優勝(ゴールドグランプリ)に輝いたのが富士宮やきそばだった。この優勝によって、第2回大会の開催地となる権利を得た。

そして、富士宮で開催した2回目のB-1グランプリには、なんと2日間で23万人もの人が集まった。これは開始前の目標の10万人の2倍以上。この大会でも富士宮やきそば学会が2年連続で優勝し、B級グルメの王者の座を揺るがぬものにした。

■はとバスでやきそばを食べに行こう

これらのイベントの効果は日ごろの集客にも大きく貢献し、いまでははとバスが東京から富士宮やきそばを食べるための観光ツアー「ヤキソバスツアー」を運行するなど、年間70万人以上の観光客が富士宮に焼きそばを食べに来ている。 「富士宮は言わずと知れた富士山の登山口であり、多くの観光資源がありながら、はとバス側は見向きもしなかった。しかし、焼きそばなら来るのだ!」と富士宮やきそば学会の渡辺氏は意気込んでいる。



こうした富士宮やきそばによる効果を調べたところ、平成13年から平成22年までの10年間に、飲食店の焼きそばの売上のほか、土産品、キャベツやソースなどの具材、観光など合計で500億円もの経済波及効果があったという計算もある。まさに地域全体の活性化につながっている。

 

全国で地域活性化に取り組むケースが多いが、その地域内だけで収束してしまい、「なかなか取り組みが地域外に伝わらない」との嘆きが聞こえてくる。ところが富士宮やきそばが大成功した要因は、「やきそば学会」から始まっただじゃれと、徹底した話題作りである。渡辺氏はこれを「焼きそばという市民的なものを『情報』という魔法によって“金のなる木”に変えた」という表現をしている。

つまり情報とは、広告などのように一方的に発信することではなく、消費者やマスコミが「話題にしたくなる」ように仕向けることである。そして「金のなる木」とは、広がりを持ち、持続性のあるまちの活性化モデルのこと。数年で枯れてしまうような単なる商品や単一の店のメニューづくりではない。

それらに不可欠なのは連携だ。例えば「やきそばG麺」は市民が自ら焼きそばを調査する組織。もちろん彼らが作ったマップは消費者視点であり、決して店舗視点や商売視点で行動したわけではない。「天下分け麺の戦い」や「三者麺談」は、「対決」「3市長」という他地域との連携だった。

富士宮やきそば学会の取り組みは、消費者視点と広い連携によってメディアと消費者を魅了し、焼きそばという地域資源でまちを活性化した典型的な成功事例と言えるだろう。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

参考:富士宮やきそば学会

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2011年11月号に掲載されたものです。

 

 

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