熊本県のPRキャラクター「くまモン」の経済効果が、過去2年間(2011年11月~2013年10月)に熊本県にもたらした経済波及効果を日本銀行熊本支店が試算した結果、1244億円となった。また、くまモンがテレビや新聞に取り上げられたことによる広告効果は、これ以外に90億円以上となった。
くまモンが「ゆるキャラグランプリ2011」で優勝した2011年11月以降の2年間における、①くまモンを利用した商品の売上高、②くまモンによって増加した観光客数をそれぞれ推計した上で、熊本県の産業連関表を用いて、①および②の熊本県への経済波及効果を試算した。なお、くまモン利用商品の売上高は、熊本県がくまモンの利用を許諾した企業を対象に行ったアンケート調査の結果に基づいて推計した。
その結果、くまモン利用商品による経済効果は2011年11月~12月が7億円、2012年1月~12月は504億円、2013年1月~10月は721億円の計1232億円となった。月額ベースで比較すると、2013年は2012年より72%増となっている。
また、1232億円の内訳は直接経済効果が761億円に対し、波及効果は470億円となっており、くまモン利用商品は直接経済効果のほうが大きいことがわかる。
一方、くまモンにより観光客は2年間で18万8000人増加し、その経済波及効果は12億円に相当すると推計された。そのうち、2012年は4億円に対し、2013年は8億円で、月額ベースでは、2013年は2012年より120%増となっており、その伸び率は商品より大きくなっている。
さらに、テレビ・新聞によるパブリシティ効果は、2年間で90億円と推計された。内訳は2011年11月~12月が7億円、2012年1月~12月は32億円、2013年1月~10月は51億円で、月額ベースで比較すると、2013年は2012年より91%増となっている。
これらの算出結果をもとに日本銀行熊本支店では、県内総生産を0.5%押し上げる効果があったとした。県の2013年のくまモン関連予算は約2億円で、パブリシティ効果はその25倍に匹敵する大きな効果があったばかりではなく、経済効果としてもNHK大河ドラマ等を上回る効果があったとしている。
今後は、くまモンが熊本県の認知度の向上や県に対する関心の喚起、県経済の押し上げに持続的に貢献することが出来るかが注目されるほか、くまモンのブランド価値の向上とあわせて、ブランド価値の維持も必要になる。そのための体制や仕組みづくりが課題としている。
経済効果の算出方法:
◆くまモン利用商品の売上高による経済効果
くまモン利用商品の売上高は2011年11月~12月が7億円に対し、2012年1月~12月は512億円と急増し、さらに2013年1月~10月には731億円とさらに伸び、この2年間での合計は1250億円となった。ただし、これらの商品の中には県外で生産される分も含まれているために、すべてが熊本県の経済に直接貢献するわけではない。
そこで、くまモン利用商品の売上高のうち、県内生産の増加額分(直接効果)を求めると761億円だった。また、この直接効果分によって県内産業にもたらされる生産誘発額(一次波及効果)は277億円となる。これらによって増加した雇用者所得が消費に向けられることによって県内産業にもたらされる生産誘発額(二次波及効果)を求めると193億円となった。すなわち、この直接効果、一時波及効果、二次波及効果の合計が1232億円となる。
◆くまモンによる観光客増加による経済効果
さらに、くまモンによる観光客増加数を、2013年3月に開催された「くまモン誕生際」の来場者数と、県内観光地での「くまフォト」(くまモンの三次元画像を取り込んだ写真撮影が出来るアプリ)のダウンロード数から推定したところ18万8000人となった。これを熊本県観光統計表に基づき県内観光消費の増加額および経済波及効果を推計すると、2年間で12億円となった。
◆パブリシティ効果
対象期間におけるテレビ放送のニュース・番組でくまモンが取り上げられた時間は1593回で127時間となり、これを広告費用に換算すると80億円に相当する。また、新聞に掲載されたくまモンに関する記事は2265本で、、広告費用に換算すると10億円に相当する。