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第2回都道府県版SDGs調査2020 7月結果発表
農村民泊で地域活性化~安心院 (大分県宇佐市)

農村民泊で地域活性化~安心院 (大分県宇佐市)

“あんしんいん”と書いて“あじむ”とよぶ旧安心院町は、農業体験や農家宿泊などグリーンツーリズムで地域活性化に取り組んでいる大分県の町。いま全国各地で「農家民宿」が行われているが、その先駆け的な地域として知られている。

“あんしんいん”と書いて“あじむ”とよぶ旧安心院町は、農業体験や農家宿泊などグリーンツーリズムで地域活性化に取り組んでいる大分県の町。いま全国各地で「農家民宿」が行われているが、その先駆け的な地域として知られている。

旧安心院町は2005年に宇佐市と合併した農山村。面積の約7割を森林が占め、農用地は2割にも満たない中山間地域だが、作家・司馬遼太郎が「盆地の景色としては日本一」と絶賛するなど、緑豊かな自然と清流が織りなす四季折々の風光明媚な景観を有した町である。



農業が主要産業で、盆地特有の気温差があるために美味しい米がとれるほか、西日本有数のぶどう団地で生産されるブドウで作られる「安心院ワイン」の産地としても知られている。

しかし、生産者の高齢化や過疎化が進み、一時は西日本一の生産面積を誇ったぶどう畑が減少するなどの問題が出てきた。そこで、ヨーロッパが発祥の「アグリツーリズム」に着目し、これを導入することで農家の意識改革を行い、農村・田舎の魅力や資源を活用した「都市と農村の交流」を取り入れて地域活性化に取り組もうと考えた。

1992年に農家中心の8名でアグリツーリズム研究会を発足し、ドイツなどヨーロッパでの取り組みなどを参考に勉強会を重ねた。そして96年3月には農業の枠を超えた幅広い連携がとれるように、町内外の約30名により「安心院町グリーンツーリズム研究会」を設立、2004年にはNPO法人化した。

◆会員制にして農村民泊を可能に

安心院におけるグリーンツーリズムの取組みの特徴は、「安心院方式」と呼ばれる会員制による農村民泊だ。これはごく普通の民家の空いた部屋に宿泊し、農村生活を体験してもらうという旅行のスタイル。ところが、いざ農家が宿泊場所や食事を提供しようとすると、旅館業法や食品衛生法、消防法などが適用され、その認可には多額の資金投資と厳しい審査が必要となる。これでは気軽に農村民泊に取り組むことができない。

そこで、旧安心院町では会員制の仕組みを導入して解決した。つまり、不特定多数を対象とするのではなく、宿泊者は会員になってもらい、「特定の人」として宿泊をしてもらうという方法だ。そして宿泊料の代わりに「農村文化体験料」を謝礼として受け取る。こうした発想の転換で、農家等は設備を整えるための新たな改築等をせずに「農家民泊」を行うことができるようになった。



受け入れるのは1日1組のみ。価格は大人が1泊朝食付きで5000円(子どもは3500円)で、夕食は1500円。「お客様扱いせず、家族のつもりで接する」というのが基本方針。

宿泊する農家でできる体験は宿泊する農家によって様々で、例えば「しいたけ村」では石窯でピザやパンを焼き、竹細工が楽しめ、「龍泉亭」では敷地内に湧き出ている清水で豆腐やこんにゃくづくりができる。また、宿泊のための建物も特徴があり、「ふかみの里 具会一処」ではお寺に泊まることができる。

「ゆすりばの里」は築150年の百姓家を改造した家に泊まれ、「百年乃家 ときえだ」は200年前に建てられた米蔵を離れとして利用することができる。こうしたそれぞれに特色のある、いつでも宿泊が可能な農家は17軒、イベントの時などに宿泊が可能なのは他に33軒ある。

その結果、安心院で農家民泊する人の数は年々増加し、現在は宿泊数は年間約6000人にもなっている。しかも特徴的なのは多くのリピーターを生み出していること。安心院では「1回泊まれば遠い親戚、10回泊まれば本当の親戚」という言葉を使う。親戚を迎えるようにありのままの生活で訪問客をもてなす。これが安心院流の農家民泊の共通の理念だ。ちなみに、「本当の親戚」になった人は40名を超えるに至っている。

◆宿泊以外の波及効果も

ここ数年、農家民泊を小中学校の教育に活用するケースも増えてきている。都会ではこうした農業の体験はできない。農家での体験を通して、自然や、食や、生活面でたくさんのことを学ぶことができる。日ごろ目にしている野菜がどのようにして作られているか、自分たちが収穫した野菜を、自分たちで料理をして、友達や農家の人と一緒に話をしながら食べることで、教科書からは学べない多くのことを感じ取る。その時間がとても楽しく、人として重要なことであるかがわかる。

農家も子たちを迎えることによって、日頃の生活や農業に新しい活力を見出すことができる。「最初は勇気が必要だったけど、農作業をすることで、元気が出てくる」「他人だけれども、まるで本当の家族のようなあたたかさを感じることができた」などの声が関係者に寄せられている。農家民泊や農業体験は、体験する側も、それを迎える側にとっても、とてもすばらしい経験になっているのだ。



また、宿泊以外でも農家体験に訪れる人の数は年々増えており、その結果、地元のスーパーや直売所の売上が増えるなど波及効果も高まってきている。前出の「百年乃家 ときえだ」では、民泊を受け入れているうちに、農家で作ったものをもって多くの人に味わってもらいたいとの思いから、農家レストランをオープンさせた。つまり、農家宿泊が町の住民に活力をもたらし、町の発展にもつながっている。

「安心院は農家が宿泊で利益を得ることを目的としているのではなく、みんなが手をつないで、町全体が活性化することを目的としている」(安心院町グリーンツーリズム研究会会長・宮田静一氏)という狙いは確実に成果をあげている。

こうした町ぐるみでのグリーンツーリズムへの取り組みが評価され、平成18年度地域づくり総務大臣表彰、23年地域再生大賞の九州・沖縄ブロック賞など数多くの表彰を受けている。安心院の取り組みは地域の農家や住民も体験する人も、そして日本中でグリーンツーリズムに取り組む地域の人たちにも勇気と元気をもたらしている。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

参考:安心院観光協会

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2011年8月号に掲載されたものです。

 

この記事のライター
地域ブランド調査2019(総合)
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