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第2回都道府県版SDGs調査2020 7月結果発表
年50万人訪れる直売所~おおむら夢ファームシュシュ (長崎県大村市) 

年50万人訪れる直売所~おおむら夢ファームシュシュ (長崎県大村市) 

長崎県大村市の農家8人で始まった「おおむら夢ファーム シュシュ」。農産物直売所やアイス工房、体験やレストランなどの「6次産業化」に取り組み、今では、年間約50万人が訪れる「農業と観光の交流施設」になった。

長崎県大村市の農家8人で始まった「おおむら夢ファーム シュシュ」。農産物直売所やアイス工房、体験やレストランなどの「6次産業化」に取り組み、今では、年間約50万人が訪れる「農業と観光の交流施設」になった。


長崎空港から車で15分、高速道路の出口から車で6分、標高100メートルの農村の中に、平成8年度にビニールハウスの小さな農産物直売所を作ったのが「シュシュ」の始まりだった。農地以外には何もない。何もないから、何か工夫をしなければ、人も集まらないし、並べた農産品も売れない。

全国にある直売所において一番の悩みは、朝の入荷したての時には商品が山積みになっていても、人気のある商品は午後にはなくなってしまうこと。品揃えが悪いとお客の満足度は低下し、足が遠ざかってしまう。そこで、シュシュではPOSシステムで販売状況を1時間ごとに生産者にメール配信することにした。

すると、生産者は在庫数を計算し、売り切れないようにと頻繁に補充するようになる。少量ずつ陳列できるようになると、常に新鮮な状態の商品が並ぶことになり、売れ残りによるロスも少なくなる。「いつでも新鮮な品が豊富にある」という評判はまたたく間に広がり、多くのお客が訪れることになった。

さらにナシやイチゴなどの果物は生産者の名前と顔写真を掲示した。商品には値段と名前が入ったシールを貼っているが、シールにミシン目を入れ、値段のところだけ切り取れるようにした。購入した人が知人へのお土産にもできるようにだ。こうすると、品質のよい品は単価が高くても売れるようになった。







[caption id="attachment_2134" align="alignnone" width="300" caption="おおむら夢ファーム シュシュ"][/caption]





◆ケッコーイケてる大ヒット

鶏卵や牛乳は「物価の優等生」と言われているが、生産する農家にとっては、経営努力が単価となって現れにくい、報われにくい悩ましい食材だということ。つまりその農家は数量を増やすのではなく、付加価値の高い商品化を目指さなければならない。

そこで、平成9年にアイスクリーム工房「手作りジェラートシュシュ」をオープンさせた。牛乳や鶏卵を単体で売るのではなく、アイスクリームにすると単価は数倍にもなる。しかも、様々な工夫をすることができ、他商品との差別化もしやすくなる。ジェラートを直売店で発売したところ、大ヒットとなり、製造が追いつかない状態になった。



こうした多くの工夫の結果、シュシュの評判は徐々に高まり、売上も増えていった。そして12年4月には、総額4億円を投資して待望の拠点施設を新設することができ、現在の「おおむら夢ファーム シュシュ」が誕生した。

17年には新設した洋菓子工房で、地元産の牛乳と鶏卵で「ケッコーイケてるシュシュプリン」を開発。なめらかな食感と楽しいネーミングが話題となって、人気商品となった。このプリンは「2007一村逸品大賞」(日本農業新聞主催)で金賞、第38回長崎県特産品新作展で「最優秀賞」を受賞し、大ヒットにつながった。

20年には地域農家から強い要望を受けて建設した加工場が稼動。大村市特産の黒田五寸人参をはじめ、桃、ぶどう、梨、ブルーベリー、パッションフルーツなどの農作物をジュース、ジャム、ケチャップなどに2次加工し、シュシュで販売することにした。これは、プリンやジェラートのようなヒット商品を作り出す以外に、これまで販売できずに廃棄していた、味はよくても形が悪い規格外品を活用することが大きな目的のひとつでもあった。そしてもちろん、その加工場は新たな雇用の場にもなる。



◆地産にこだわったレストラン

シュシュの自慢はぶどう棚の下で食事ができるという触れ込みではじめた「ぶどう畑のれすとらん」。もちろん野外ではなく屋内で、旬の食材を利用したランチバイキングが人気だ。これは地元で昔から伝わるお惣菜などをはじめ、基本は地元の野菜を活用した「地産地消」の料理を提供している。

もちろん果物の加工場と同様に、そのままでは売りにくい規格外の野菜を使い、廃棄する野菜の比率を抑えるのにつながる。これはレストランとしてはコストを抑えるのと同時に、農家としては収入が高まるという一石二鳥になる。ちなみに、夜には地元の大村産の和牛や豚肉を使った焼肉レストランになり、結婚式や法事などの宴会場にもなる。

このほかにも、シュシュでは「農村」であることを活用して、様々な取り組みが行われている。施設内にある体験教室では年間約1万人が参加して、手作りウインナー教室、地産地消のミルクパン教室、いちご大福とシュークリーム教室など様々な体験が行われている。

例えば、いちご狩りではハウスから体験教室まで走れば2分程度の距離。収穫したばかりのいちごを使って、あらかじめ練っておいた生地で包むだけで、手作りのいちご大福になる。ほかにも大村名物の落花生を使ったピーナツバター作りなど、収穫と料理を組み合わせたシュシュならではの体験メニューが人気だ。



「農家や地域を活性化するには、その地域内での消費力や購買力を上げることが大切。そのためには、まず地元の人がその土地のものを愛すること。自分の周りにもっと目を配り、その土地でできたもので料理してこそ、本当のおもてなしだ」と代表取締役の山口成美氏は強調する。

山口氏は「成功のカギを握るのは女性」と言い切る。消費も購買も女性が多くを握っている。だからそれをビジネスにするには女性の感覚は不可欠とのこと。また、農業後継者の嫁不足は深刻な問題となっている。そこでシュシュでは、婚活イベントを毎月1回実施している。年間16組のカップルが誕生し、農業後継者を含めた若者に夢と希望を与えているという。

シュシュが目指すのは “観光農業でお客様に感動を与え、後継者に希望を与える”という夢のある農業。「おおむら夢ファーム」という名前にはこの気持ちが込められているのだ。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

参考:おおむら夢ファーム シュシュ

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2011年6月号に掲載されたものです。

 

この記事のライター
地域ブランド調査2019(総合)
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