第41回:鵡川ししゃも

「柳葉魚」と書くシシャモはキュウリウオ科に属する魚で、世界中でも北海道南部の太平洋沿岸の一部でしかとれない。スーパーなどで売られているのは輸入品のカラフトシシャモ（カペリン）で、見ためは似ているが、まったく別種。

回遊魚で10月に産卵のため川を遡上する雌が「子持ちシシャモ」で、白子のある雄とともに酒肴（しゅこう）として珍重されている。シシャモの産地として最も著名なのがむかわ町。「鵡川（むかわ）ししゃも」は大きいサイズは10尾で数千円にもなる。塩水につけて生干ししたものを火でさっとあぶって食べるのが一般的だが、地元では刺し身やすしネタとしても食され、シシャモを入れた柳川風の鍋「柳葉魚鍋」もある。

10月には、商店の軒先にシシャモがすだれ干しにされ、むかわ町の風物詩になっている。「神がくれた魚」として尊ばれたこの魚の豊漁を祈る儀式もある。

（ブランド総合研究所社長　田中章雄）

※当記事は、2011年5月9日発行の日経ＭＪ（日経流通新聞）に「地域ブランド　AtoZ」として掲載しています。記事は日本経済新聞社の許諾を得て います。 無断での複製・複写・転載を固く禁じます。