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第2回都道府県版SDGs調査2020 7月結果発表
ヨソモノ呼び込んで活性化 (島根県海士町)

ヨソモノ呼び込んで活性化 (島根県海士町)

島根県沖の日本海に浮かぶ隠岐諸島の海士町(あまちょう)は、島根半島の沖合い約60㎞の日本海に浮かぶ隠岐諸島の中ノ島からなる人口約2500人の町。大山隠岐国立公園の豊かな海に囲まれ、後鳥羽上皇にまつわる貴重な文化遺産・史跡や伝承も数多く残っている島だ。

島根県沖の日本海に浮かぶ隠岐諸島の海士町(あまちょう)は、島根半島の沖合い約60㎞の日本海に浮かぶ隠岐諸島の中ノ島からなる人口約2500人の町。大山隠岐国立公園の豊かな海に囲まれ、後鳥羽上皇にまつわる貴重な文化遺産・史跡や伝承も数多く残っている島だ。


同町は、平成の大合併が進む中で、合併をしない道を選び、少子高齢化による生産年齢人口の減少、公共投資の急激な縮小、地方交付税の大幅な減額による財政危機といった厳しい状況の中、この危機的な状況を打開するためには行政の力だけで解決は困難と考え、住民代表や議会とともに、苦境を乗り切る方策を検討した。

1つは徹底した経費の削減である。職員の給与カットを率先して行ったことで、住民も一体となった経費削減への取り組みにつながった。

しかし、単なる財政再建のための短期的な施策だけでは乗り切れないため、人口施策(定住対策)及び産業振興への投資も取り入れた「攻め」の改革にも本格的に取り組み始めた。それが島の生き残りを賭けた「海士町自立促進プラン」で、行財政改革、人口施策、産業施策の3つの分野について、それぞれ短期戦略と、中・長期戦略の両方から構成されている。

◆CASで魚介類のブランド商品化へ

その産業施策の内容は、隠岐諸島にある自然環境と地域資源を活用し、「海・潮風・塩」の3つキーワードとして、島をまるごとブランド化しようという「海士町自立促進プラン」である。

その取り組みの1つが魚介類のブランド商品化だ。海士町では、白いか、岩がき、真鯛など新鮮な魚介類が獲れるが、離島であるがゆえに、市場に着くまでに時間がかかるため鮮度が落ちて商品価値も落ちてしまう。そこでCAS (Cells Alive System)と呼ばれる冷凍技術を導入した加工施設「CAS凍結センター」を整備することにした。CASとは磁場を用いて細胞を振動させたまま凍結する技術で、この方法だと細胞が破壊されることがないため、解凍後も新鮮な状態に近い味を再現することができる。

この施設は2005年3月に完成し、その運営会社として第三セクター「株式会社ふるさと海士」を設立。同町の特産品である白いかなどの水産物が東京など大消費地への出荷が可能となった。さらに水産物を加工した商品「いわがきごはん」「さざえごはん」なども誕生している。

◆伝統手法による天然塩のブランド化

CASが最先端の技術を活用しているのに対し、昔から伝わっている伝統的な手法による商品開発も進められている。それが天然塩のブランド化だ。

海士町では、かつて竹を利用して海水を濃縮する方法で、天然の塩づくりを行っていた。この方法を、地元のお年寄りらのグループ「横瀬原塩宴会」が島の子供たちに公民館で教えていた。ここで作られた天然の塩はミネラル分を豊富に含み、料理する際に用いると魚介類の味がいっそう引き立つ。

そこで、竹を利用した天然塩づくりを本格的に事業化することにした。「海士御塩司所」と命名された生産工場を設立し、上記の「ふるさと海士」が委託管理を行い、ここでつくられた美味しい天然塩を「海士乃塩」として商品化することに成功した。

さらに、この天然塩を使った自社製加工商品づくりにも積極的に取り組み、梅干しや近海で獲れた真いかを使った塩辛、製造の過程でできるにがりを使った豆腐なども商品化され、人気を博している。

 

◆ヨソモノが生み出したヒット商品

こうした産業振興の取り組みを行うにあたり、海士町では外部人材の活用(呼び込み)を積極的に行っている。そのひとつが「島の宝探し、しませんか」のキャッチコピーで行っている「商品開発研修生」という制度。島外からやる気のある人には1年契約で研修生として常駐してもらい、特産品や観光商品等の商品開発に取り組んでもらうというものだ。ワカモノでありヨソモノである彼らが持っている、島民にはない新しい着眼点や発想を使って、新たな商品開発を行おうという狙いだ。

この制度で生まれた大ヒット商品の一つが、“島じゃ常識”と銘打った「さざえカレー」で、今では年間数万個も売れるヒット商品になっている。 海士町では、豊富に獲れるサザエをカレーに入れるのが当たり前。ところが島外の人たちにとっては常識破りの珍カレーだった。そこで、農協婦人部と一緒に商品化することにしたところ、人気商品になったのだ。



ワカモノを呼び込む手段はこの商品開発研修生以外にもある。たとえば2007年には一橋大学の留学生20人(12カ国)が海士町で体験旅行を行い、牛の世話や塩づくり、旬の岩がきの出荷作業など、離島の生活をそのまま体験した。また、島根県からの補助を受けて、仕事や就学をせずに職業訓練も受けない「ニート」と呼ばれる若者らに働く意欲を持ってもらおうという就業体験プログラム「若者島体験塾」を2006年に実施している。

定員割れして統廃合の危機にあった隠岐島前高校の改革の一環として、2010年4月に導入したのは「島留学制度」という新制度。寮費を町が全額補助する学生寮を用意して、全国から学生を募集するもので、「地域創造」コースと「特別進学」コースの2つがある。

こうして採用した人材の中には、島に定住する人も続々と生まれている。Iターンによる定住者の数は2004年から2009年までで144世帯、234人にもなる。これはなんと海士町の人口の1割近くを占めている。もちろん島の大きな戦力となっており、商品の製造や販売、企画、広報などで第一線として活躍している。

地域の活性化には、「守り」と「攻め」が必要。経費節減という守りと、産業振興と人材の呼び込みという攻めの両面で、海士町の島の生き残りを賭けた取り組みは続いている。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

外部リンク:海士町

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2010年11月号に掲載されたものです。

 

この記事のライター
地域ブランド調査2019(総合)
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