第165回　九条ねぎ

　京都市で生産されている葉ネギ（青ネギ）の一種。京都の伝統的な野菜で、口当たりがやわらかで甘味があり､葉の内部にぬめりがある。関東では根深ねぎ（白ネギ）が主流だが、近畿地方ではネギといえば九条ねぎをさすのが一般的。
　色が濃く太めの太ねぎ（黒種）と浅黄色でやや細く、株分かれしいやすい細ねぎ（浅黄色種）がある。もともとは大阪・難波に自生していたネギが京都に伝わり、九条地区で品種改良が施されて生産されるようになった。ただし現在は九条の南に位置する十条地区が生産の中心である。四季をとおして風の強い日が少なく、夏の夕方は冷気が山々から流れ込み、冬は「京の底冷え」と称される寒気の厳しい気候が九条ねぎに向いている。

　京都では、奈良時代以前から九条ねぎが食用にされていたほか、かぜ薬としての民間療法として、ネギ湯、焼きネギの湿布などにも使われてきた。

（ブランド総合研究所　田中章雄）

※当記事は、2013年11月04日発行の日経ＭＪ（日経流通新聞）に「地域ブランド　AtoZ」として掲載しています。記事は日本経済新聞社の許諾を得て います。 無断での複製・複写・転載を固く禁じます。